第3章 狂皇子との出会い ー血の契約 (ルカ視点)
『……ここは、どこですか。』
「ハイランド領、皇都ルルノイエだ。」
「俺はルカ・ブライト。この国の皇子だ。
……お前は、あの村の生き残りか。」
『……はい。』
「俺たちが着いた時、墓と死体の山があった。
村を襲ったのは都市同盟の兵。だが、奴らは全員斬られていた。
お前の仕業か。」
女は唇を噛み、頷いた。
その目には後悔も迷いもない。
ただ、燃え尽きた灰のような静けさ。
「俺に剣を向けたのは、都市同盟と見間違えたからか。」
『……申し訳ありません。
治療していただいたことには感謝します。
ですが、私は――貴方に剣を向け、兵を傷つけました。
罰を……お受けします。』
その声には恐れがなかった。
生き延びた意味を、自ら断とうとする者の静けさ。
ルカは問う。
「都市同盟を、憎んでいるか。」
女の目の奥がわずかに揺れた。
『……憎んでいます。』
凍るような確信。
激情ではなく、底冷えするほどの憎悪。
ルカは口元に薄く笑みを浮かべた。
「そうか。なら、死ぬには惜しい。」
立ち上がり、灯りの下に影を落とす。