第3章 狂皇子との出会い ー血の契約 (ルカ視点)
剣が交わる音――その瞬間、彼女の刃が弾かれた。
崩れ落ち、地に伏す。
だが、瞳だけはルカを睨み続けていた。
「ルカ様に無礼を働くとは――!」
ソロン・ジーの怒声が響く。
「やめろ。」
その一言で、場の空気が凍った。
ルカの視線がソロンを射抜く。
「連れて帰れ。死なせるな。」
クルガンが頷き、兵が女を抱え上げる。
ルカは背を向け、静かに言い放った。
「俺の手で拾った命だ。どう使うかは、俺が決める。」
焦げた風が、血と灰の匂いを攫っていった。
⸻
幾夜が過ぎた。
女は高熱に魘されながらも、生き延びた。
なぜかは分からない。
ただ――あの瞳が焼き付いて離れなかった。
そしてある夜、報告を受けて部屋に入る。
薄暗い石室。
薬草の匂い。
ベッドの上で、女の睫毛が微かに震えた。
「……目が覚めたか。」
女が反射的に体を起こし、鎖の音が響く。
その目には、まだ光が宿っていた。
「そう睨むな。」
ルカは腰の剣を外し、黒い机に置いた。
そして、その机の端に指を置き、無言のまま彼女を見た。
「殺すつもりなら、治療などしない。」
女の視線が揺れる。
包帯の下に残る痛みと、清潔な布の温度。
少しだけ、警戒が緩む。