第2章 芹沢先輩
え?
口説く?誰を?
一瞬頭が真っ白になった。
先輩は表情一つ変えずに、私の瞳をただ真っ直ぐ見つめる。
「え、あ。南波くんですか!?やだな、先輩!そんな趣味があったなんで驚きなんですけど!」
「ふふ、動揺してるのも可愛い。」
彼はグラスを持っていた手をそのまま私の手に重ねてきた。
ゴツゴツした肉付きのある冷たくてひんやりした手が、私の手を包み込む。
「わかってるでしょ。…君のこと口説こうとしてんの。」
先輩の甘ったるい声が私の耳に響く。
可愛いって一言だけで、火を吹くくらい動揺しているのに、そんなものを飛び越えた発言に気を失いそうになる。