第5章 ダークホース
「あ!村瀬、芹沢先輩って名前聞いたことあります。時折、女性社員が噂してるくらい評判らしいんですけど、彼の方だったんですね〜!」
「そーなんやー。そんな先輩から告白されて、"古村さん"はモテモテやなー。」
明らかに南波くんが嬉しくなさそうな顔をするので、こちらも反応に困ってしまう。
来週のサシ飲み、絶対に気まずい…。
「で、先輩!どうするんですかぁ〜?」
恋バナを楽しんで聴いている彼女は遠慮なく質問を続けた。
「どうって…何が?」
「そりゃ、付き合うんですか?って話ですよ〜。」
何の事情も知らない人から見れば、確かに気になることだと思う。
しかし、それを今聞いてくるのは私にとって酷だった。
なぜなら、ここで先輩と付き合わないと発言すれば、振られた人として噂が村瀬さんから広まりかねない。
できれば、先輩とも気まずい雰囲気で仕事することは避けたい。
ど、どう答えよう…。