第5章 ダークホース
遡ること数時間前。
村瀬花蓮のフォローを任されていた私は、終業時間まで彼女の仕事を手伝っていた。
「じゃあ、あと、このファイルを部長に共有して終わりにしようか。あとは私いなくても大丈夫だよね。この後予定あるから、先に帰るね。」
それじゃあ、と自分のデスクへ向かおうとしたとき、彼女に腕を掴まれた。
「せ、先輩待ってください!予定ってなんですか?実は、日頃お仕事見てもらってるお礼に今日ご飯行きたくて…。」
うるうると澄んだ瞳をめいいっぱい煌めかせ、懇願してくる。
「あ、ありがとう。気持ちは嬉しいけど、別日でもいいかな?今日は同期と飲む約束してるから。」
「え!まさか女の人だったりしますか?村瀬、もっと女性社員と交流深めたいです、。」
「いや、男だけど…。」