第3章 名前を求めるか
「…何人にも捨てられたのでしょう?」
『そうだ』
「…何人ほどに飼われて来たのですか?」
『…もう、忘れちまったよ…。 …でも、二十人以上だった気はする』
「途中で野良として生きると考えた事はないのですか? …尻尾さえ隠せば見た目は人…、人として生きる道もあったのでは?」
スッとメフィストは赤髪の青年の頬を撫でた
赤髪の青年はフッと笑った、それは撫でられて擽ったいとかではない
『お前は、自分の"あり方"を捨てられるというのか?』
ピタリッとメフィストは手を止めた
『人が人であるように、虫は虫。 悪魔は悪魔…、猫は猫』
「…貴方はハーフでしょう? 悪魔と」
『ククッ…、お前は悪魔としての力は強い…。 だけど俺には悪魔としての力などはない…、悪魔として生きれば他の悪魔に喰われて死ぬだろうな』
「ほぅ…」
メフィストは目を細めて、赤髪の青年の顎を人差し指ですくい上げた
「目の前に貴方と同じ悪魔が居るじゃないですか?」
『…』
「私に食べられるとは思わないのですか…?」
ニッと妖しい笑みを浮かべ、顔を近づけるメフィスト…
『ククッ…、お前は俺のご主人様だからな…?』