第3章 名前を求めるか
メフィストが止めた事によって赤い猫は口を閉じた
「…本当の名前はどれなんですか?」
『そもそも名前とは何なんだ?』
「え?」
『ないと困るものなのか?』
「困るも何も…、親にでも付けてもらわなかったのですか?」
『親? 俺は生まれた時から一匹だった、親の顔も名すら知らない』
赤い猫はメフィストが座る理事長の席の机に飛び乗り、紅茶の匂いを嗅ぐ
「…では、先ほどの色々な名前は?」
『今まで俺を飼っていた人間が付けた名だ』
ペロリッと赤い猫は紅茶を一ナメした
「そうすると沢山の人間に飼われてお世話されてきていたようですね? 飼い主さんは皆亡くなってしまったのですか? 人間というのは脆く儚い生き物ですからね?」
ふふっと赤い猫を見ながらメフィストはニヤニヤ笑う。 赤い猫に少しは悪魔としてのプライドくらいは持っているだろうと思ったからだ
すると
ポンッと可愛らしい音を立てて、赤い煙の中から赤い猫は朝見た時の人の姿になって座っていた
『人はどんなに俺を愛して、大切にしてくれても、俺がただの猫じゃないと分かれば俺を捨てるんだ』
その言葉にメフィストは予想外で少し驚いた