第1章 【月と恋は満ちれば欠ける】
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その少女を見た瞬間、息が止まるほどに心を激しく揺さぶられた。
惚れたとか腫れたとか、そう言う類のものではない。
ーーー似ていたのだ。あのひとに。
己の命を投げ打ってでも、もう一度会いたいと願ったひと。
何を捨てても、何を失ってもいいから、あと一度だけ、たった一度だけ、抱きしめてほしいと願ったあのひとにーーー母さんに、似ていたのだ。
「お怪我はありませんか?」
『大丈夫?怪我はしていない?』
嫋やかな栗色の髪を左右に緩く流し、優しげに下がった眉でエドワードの心配をするその少女の姿が、痛いほどに母の幻影と重なる。
エドワードはしばらくの間呼吸も忘れて少女を見入っていた。
ーーーあ、瞳の色は違うのか。
正面から見つめあった少女の瞳は、晴天を切り取ったような空の色をしていた。
母さんの瞳は翡翠だったら、そこは違う。
それによく見たら顔立ちも違っていた。
母さんは優しい雰囲気を持つ人だったが、目元や口元は凛と涼やかに整っていた。
しかしこの少女の目尻は丸味を帯びて、大きく垂れ下がっている。
溢れそうなほど大粒の瞳は幼い印象を与えた。
薄く桜に色づいた頬もあまり似ていない。母さんのほっぺはこんなにもちもちじゃなかった。
見れば見るほど表象的な部分が似ていないことに気がつく。
ではなぜ、こんなにも心を揺さぶられるのだろう。
エドワードがその理由を知るのは、まだ少し先の物語だ。