第1章 【月と恋は満ちれば欠ける】
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「……ド…さ……ワ…さん…ーーーエドワードさん」
「おわっ、」
視線を上げると、青空が広がっていた。
「エドワードさん?」
ーーーのではなく、蒼石の瞳であったことに気がつく。
あまりにも読書に没頭していたので反応が遅れたが、声の主は鼻と鼻が触れ合いそうなほど近くでこちらの顔を覗き込んでいた。
慌てて距離を取り、なに?と取り繕った声を絞り出す。
「ちょうどお昼時なので、軽くつまめるものを用意したんです。一度休憩なさいませんか?」
笑顔で差し出された皿の上には片手で掴める大きさのサンドウィッチが綺麗に並べられている。
いささか量が多いが、エドワードとアルフォンスの二人分なのだろう。
少し心苦しく思いながら礼を言い、一つ掴んで口に運んだ。
「ん、うまい」
ハムとレタスを挟んだだけのそれは薄味で、疲れた脳に心地よく養分が染み渡る。
コーヒーで口を潤して、身体の力を抜くように首を回した。
「そういえばアルは……」
「アルフォンスさんならあちらでニーナと遊んでくださっています」
あちら、と指さされた方向をみると弟は小さな女の子ーーーニーナを肩車して「高いぞー」と浮かれた声を出していた。
「おい、資料も探さねーでなにやってんだ!!」
「いやぁ、ニーナが遊んで欲しそうだったから」
花を飛ばして和む二人、主に弟に向けて呆れた視線を向けると、隣でくすくすと鈴を転がす笑い声が聞こえる。
「ごめんなさい。お邪魔になるとは言ったのですが、アルフォンスさんがいいとおっしゃってくれて」
優しい方ですね、と瑠璃色の瞳が細められる。
暖かい、愛おしいものを見守る視線である。
エドワードもその温度には覚えがあった。
きっと自らが弟に向ける目も、同じ色を宿している。
兄弟と姉妹、兄と姉。
カタチは違えど、弟や妹に向ける感情は変わらないのだろう。
親近感に似た何かが心の内に広がるのを感じながら、エドワードは二つ目のサンドウィッチに齧り付いた。