第1章 【月と恋は満ちれば欠ける】
「マスタングさん!」
「久しぶりだね。会えて嬉しいよ、シェリー」
マスタングさんは流れるように私の手を取ると、甲にキスを落とした。
すごくキザな仕草だけど、マスタングさんがすると様になる。
マスタングさんは2年前、お父さんが国家資格を取る時にいろいろお世話になった軍人さんだ。
試験の手続きやらなにやらで、すごく助けていただいたらしい。
その関係でマスタングさんはたびたび我が家にやってきて、私やニーナにもよくしてくれた。
お父さんが無事に資格を取得してからは、そういうことは無くなってしまったけれど、すごく感謝をしている。
「リトルレディも元気かな?」
「はい、おかげさまで。今日はリザさんはご一緒じゃないんですね」
「実は内緒で抜けてきたんだ。君に会いたくてね」
パチリ、とウィンクするマスタングさんに「もう」と口を尖らせる。
冗談だとはわかっていても、マスタングさんのようなイケメンが相手だと心臓に悪い。
咎めるような視線を向けると、ニーナの頭に手を置いたマスタングさんは「手厳しいな」と爽やかに笑った。
「今日は君のお父上に会いたいという者がいてね。連れてきたんだよ。ーーーおい、鋼の!いつまで寝ているつもりかね」
「見てねェで助けろよクソ大佐ッ!」
いけない、マスタングさんとのお話に夢中になって、すっかり忘れてしまっていた。
慌ててアレキサンダーを退けると、ようやく圧迫感から解放されたのか、金髪の男の子は「ぶはぁ!」と大きく息を吸った。