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愛、屋烏に及ぶ【鋼錬夢】

第1章 【月と恋は満ちれば欠ける】



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「今回の件でひとつ貸しができたね、大佐」

東方司令部、執務室にて。
テロ組織「青の団」による軍将校の殺害を目的としたトレインジャック事件を早期解決に導いた立役者である少年ーーエドワード・エルリックは引き攣った笑みを浮かべる上官をゴールドの瞳で見据え、唇の端を吊り上げて言った。
革製のソファが鋼鉄の重みにギジリと軋む。
紙とインクだけの部屋に、オイルの匂いが少し混じった。

「君に借りを作るのは気色悪いが……いいだろう、何が望みだね」
「さっすが、話が早い」

前置きもそこそこにして要求を提示し始めたエドワードに、マスタングは苦笑しつつも本棚から資料を引き抜く。
彼の秘書官によって美しくファイリングされたページをめくりながら一服付き合えと促すが、すげなく断られた。
相変わらず生き急ぐのが好きらしい。

「あぁ、これだ」

目当ての項目を引き抜くと、並べられた情報と記憶を照らし合わせるようにマスタングはその男を読み上げた。

「“綴命の錬金術師” ショウ・タッカー。2年前、人語を使う合成獣の錬成に成功して国家錬金術師の資格をとった人物だ」
「人語を使うって……人の言葉を喋るの?合成獣が?」

信じがたいことだ。
アメストリスの長い歴史の中でも、人語を解する合成獣の錬成に成功した者はいない。故にその偉業を成し遂げたショウ・タッカーは“合成獣の権威”と呼ばれているらしい。
だがしかしその驚異的な錬成物である合成獣といえば、エサも食わずに餓死してしまった、と。 
唯一口にした言葉は、たった一言。

『死にたい』

ーーなんとも形容し難い内容である。
しかし錬金術師にとっては、これ以上ないほどに知識欲を唆られる話だ。

「まぁ、とにかくどんな人物か会ってみることだね」

借りはきっちり返すさ、と微笑むマスタングに連れられ、エルリック兄弟はタッカー邸へと赴いた。

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