第2章 弍 黎明
それから数刻。
童磨と話していていくつかわかったことがある。
まずここは大正時代であり、彼らは鬼という存在であること。人を襲い食べるため人の中には鬼狩りなる人たちがいて、それらと争っていること。鬼は陽の光が苦手なので日中は外で活動できないこと。など……。
何がどうして踏切で電車に轢かれた私が大正時代にいるのかはさっぱりだが、よくよく考えれば死んだ後どうなるかなど生きている人間は誰も知らないことなのだから不思議でもない。これが世のことわりなのだと納得しておくことにする。
一応私が令和から来た人間であることは童磨に伝えたが、「無惨様に伝えて原因を探ってみた方がいい? ああでも、澪ちゃんは別に未来へ帰りたいわけじゃないからどうでもいいか。帰りたいなんて言い出したら殺しちゃうからね」などと屈託のない笑みで言うので、その話はそこで終わった。私も別に今更あの時代に未練などないし。……あるとすれば、ここで自分が幸せになってもいいのだろうかという罪悪感の方か。
ちなみに私が倒れていたのは小さな町の一角、人通りのない裏道だったらしい。童磨さまが偶然見かけて声をかけたとか。今日はその出来事の翌日で、私が眠っていたのは一晩ほど。
そんな話をしているうち、日も落ちて暗くなってくる。
「ね、澪ちゃん。外へ行こう! "恋"をしている男女は2人きりで町を歩いたりするんだよね?」
ウキウキと楽しげな彼を見れば断る理由も浮かばない。なんだか無邪気に笑う様は子供のようにすら見える。私は迷いなく頷いて立ち上がった。
「でもその、さっき教えてくれたおふぃすかじゅある? っていう服装は流石に目立つよね。俺が着替えさせてあげるからちょっと待ってて」
童磨はそそくさと部屋を出ていくと、数分して手に何かを持って戻ってきた。見ればそれは着物だ。桃色の可愛らしい、桜の柄の着物だった。
「素敵な着物ですね」
「でしょー? 女の子はこういうのが好きだって信者の1人が置いて行ったんだよね」
童磨は着物を広げながらこちらに近寄ってくる。でしょーなどと言っているが彼には着物の可愛らしさなどほとんどわかってなさそうだ。
「さ、じゃあ服を脱いで」
「脱……!?」
「脱がないと着れないじゃない。ああ、それともその服って着物の下に着るものなの?」