第4章 参 驟雨※
「だから、他の男に変に触られる前に囲っておこうと思ったんだ」
すり、と服の上から彼の手が腰に触れる。大きな手が腰から臍にかけてをなぞるように滑っていき、そのいやらしい手つきに思わずぞくりと身を捩った。
私の左手を掴むと、そのまま口元へ持ってきて薬指に軽く口付ける。昨夜付けた赤い痕を愛おしげに撫でるようにしながら。
「し、信者さんの前ですよ」
「うん」
「うんじゃなくて……!」
私はあまりの羞恥に思わず真っ赤になりながら大きな声を出してしまう。ずっと童磨が余裕の笑みを浮かべているのがより恥ずかしい。
「あはは。まあ俺は誰に見られようが一向に構わないんだけど、澪ちゃんが嫌がるならやめようか」
ぱ、と手を離すと彼はいつも通りの笑顔に戻る。
一方で私の方はどくどくと心臓がうるさい。自分より一手も二手も上手のこの鬼に弄ばれている。火照る体を誤魔化すようにすぐさま童磨と距離をとった。
その様子すら童磨は楽しげに眺めている。
「そ、そうだ。私お風呂の場所を聞こうと思って童磨さまを探してたんです」
誤魔化すように私は強引に話題を変える。羞恥と混乱で今すぐこの場から逃げ出してしまいたかった。
しかし私は出す話題のチョイスを誤ったらしい。状況はさらに悪化する結果となる。
「お風呂かあ……あ、じゃあ一緒に入ろう。今日はもうみんなと話したし、俺もそろそろ休憩〜」
「え?」
童磨はひらひらと信者たちに手を振ると、私の返答を聞く前にひょいと抱き上げて立ち上がった。そのまま襖を開けてずかずかと歩き出す。
「お、おろしてください童磨さま……! ひとりで入れますよ!」
一緒にお風呂なんてとんでもない。恥ずかしくて爆発してしまう。しかしおろして欲しいと腕の中でじたばたするも、圧倒的な力の前に無駄な足掻きでしかない。
「そう言わずゆっくりしようよ。夫婦になるんだし」
「私はまだそれ、同意してないのに……」
「でもどうせ君は拒否できないよ」
不意に足を止め、私の顔を覗き込む。真意の読めない笑みだ。
「それに嫌じゃないでしょ? 君も俺と一緒にいたいと思ってるはずだ」
全てを見透かすような瞳。それに射抜かれると、つい何も言えなくなってしまう。