第4章 参 驟雨※
私は人を食べる鬼と生きることを決めた。たった1人の存在のために大勢の人の命を犠牲にすることを選んだ。
この胸を刺す罪悪感と共に、今日の選択を一生抱えていくだろう。
「それにしても童磨さま、今日はいないんだな」
いつも目が覚めるタイミングで目の前にいたものだから、いざいないとなるとなんだか不安になる。しばらく待ってみたが現れる気配もないので、私は悩んだ末襖を開けて自分で風呂場を探してみることにした。
昨日少し見た時も思ったがこの建物は相当広い。寺院というだけあって個人が住まう家屋とはやはり違うのだろう。彼の部屋などはどこにあるのか、彼の姿を探し廊下をさ迷ってみる。昨日は外に出るためにすぐに玄関に向かってしまったため全く道が分からない。
「そっかそっか〜。大変だったね」
ふと歩いていると、突き当たりの部屋から童磨の声らしきものが聞こえてきた。そっと襖に近寄って耳をそばだててみる。
「大丈夫だよ、きっと君は救われて天国に行ける」
「ありがとうございます…!」
童磨以外の声もわらわらと聞こえてくる。どうやら女性信者数人の話を童磨が聞いている、という光景のようだ。
宗教をやっていると言っていたけどやっぱり童磨さまが教祖なんだ。前世では無宗教だったから私にはよく分からないけど……。
そんなことを考えながら、物音ひとつ立てずに童磨が出てくるのを待っていたはずなのだが。
「それでね、今日はみんなに紹介したい子がいるんだ。ちょうど今来たみたいだよ」
「え!?」
ば、バレてる……!
吃驚して腰を抜かしそうになったが、よく考えたらそれもそうか。後ろを向いていてもコンマ数秒で人を殺せるような鬼だし……視界以外の何かで存在を感知してるんだろう。きっと人にはない第六感があるんだ。
「おいで、澪ちゃん」
「は、はい……失礼します童磨さま」
おずおずと襖を開いて、部屋の中へと足を踏み入れる。そう広い部屋ではなかったが、数人のやつれた顔をした女性がそこには正座をしていた。その正面に見慣れない帽子のようなものを被った童磨があぐらをかいて座っている。
童磨は私の姿を見るとからからと笑いだした。
「あは、澪ちゃん。それ寝巻きだよ」
「寝巻き!?」
「昨日服を汚しちゃったから俺が脱がせて寝巻きを着せておいたんだ」