第4章 参 驟雨※
「そ、それは……ありがとうございます」
信者さんたちの前だと言うのに私の顔は羞恥で真っ赤になってしまった。寝巻きのまま来てしまったことも童磨に知らぬ間に裸をまた晒していたことも二重に恥ずかしい。
「とまあそれはいいとして。本題はここからなんだけど」
童磨はまるで気にしていない様子で自分の横の床をトントンと叩きながらこちらを見る。どうやら横へ座れということのようだったので、私はそのままおとなしく隣にちょこんと正座をする。
「みんな、この子は俺のお嫁さんになる澪ちゃんだよ」
「はいっ!?」
全然聞いていない話が始まって思わず咳き込んでしまった。驚きに真横を凝視するも、童磨はいつものようににこにこと笑みを浮かべているだけである。目が合うとにこ、と綺麗に微笑まれた。それ、どういう感情……?
動揺する私をよそに信者たちからは「まあ…!」と歓声が上がり、しまいには「おめでとうございます!」と祝福されてしまった。とても否定できる空気ではなく私は童磨の横で小さくなることしかできない。
「あの……どういうことですか……?」
小声で耳打ちするように声をかける。
「だって君、俺としか生きられないって言ってたじゃないか」
「言いましたけども……」
確かに広義プロポーズとも取れなくはない。
「俺もそろそろ教祖として身を固めたらどうかって思ってたし、君にとっても最適だと思うよ」
「本当にそんなこと思ってましたか……?」
身を固めるも何も、鬼に配偶者って必要ないだろう。多分。
「身寄りのない私はともかく、童磨さまにわざわざ私と結婚するメリット……得ってあります?」
「あるよ?」
童磨は綺麗なその瞳を薄く細めた。
かと思うと、突然私の方へと身を乗り出す。頭へ手を添えると耳元に口を寄せ、囁くように声を出した。
「君とのキスは味がしたんだ。甘くて驚いたよ、他の女としても何も感じなかったのに。……きっとこれが人間の言う運命ってやつだよね?」
私はその言葉を聞いて呆然としてしまった。
ドクドクと鳴り響く心臓がうるさい。彼がどこまで本心で語っているかも分からないのに、分かりやすく心臓の奥が痛くなる。