第2章 弍 黎明
店内は暗めの照明がいくつかついており、ゆっくりしたジャズのレコードがかかっている落ち着いた雰囲気のお店だった。決して広くはないが狭苦しくも感じない。店員さんに案内され、窓際の一番奥の2人席に向かい合って座る。
メニュー表を開くとサンドウィッチやオムライス、ビフテキ……など素朴な料理が並んでいる。私は少し考えてから顔を上げた。
「じゃあ私はオムライスと、コーヒーにしようかな。童磨さまは?」
「俺は食べないよ。美味しそうに食べてる君を見てようと思う」
「そ、そうですか……」
鬼はやはり人の食事はしないのか。それはいいとして、先ほどの映画のときのように食事中ずっと凝視される結果になると気まずい。また味がしなくなる。というか……。
「……一緒に食べられないのに、来てしまってすみません」
1人で食事を摂ることになってしまうのを申し訳なく感じて、私は手元に視線を落とす。
「君は優しいね! でも俺はあとでちゃんと食べるから大丈夫だよ。ほら、好きなの頼んで」
「ありがとうございます……」
なんとなくわかってはいたことだったが、童磨はまるで気にしていない様子だった。彼が言うならそれ以上食い下がるのもよくないと思い、私は店員さんを呼んでオムライスとコーヒーを頼んだ。
私を気遣っていると言うより、本当にどうでもいいというようなニュアンスだったと思う。鬼に対してこんなことを思うのも変だが、一緒にいる人とどうせなら一緒にご飯を食べたいと思うことが少しもない人生というのはどういうものなんだろう。彼はこれまでずっと1人だったんだろうか。というか鬼ってどこから発生するんだろう? 親とかいるの?
「何考えてるの、澪ちゃん」
ふいに前を見ると眼前に童磨の顔があった。思考の海から引き戻され、思わず赤くなった顔を隠すようにこほんと咳払いをする。
「いえ、ちょっと童磨さまのことを……考えていました」
「俺のことー? どんなことを考えてたの」
「……どうせならもっときみを理解したいなと、そんな感じのことです」
恥ずかしくなり童磨から目をそらす。うろうろと行き場を失った視線を彷徨わせた結果、もう頼む気もないのにメニューを凝視することとなった。
「そう。俺を理解したいんだ」
童磨の声色は変わらず楽しげだ。