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ハリー・ポッターと笑わないお姫様【3】

第7章 まね妖怪との対決




「さあ、お入り」



柔らかな声がして、ルーピン先生が木の扉を押し開けた。
チユたちは顔を見合わせながら、そのあとに続いた。

職員室は、古びた板壁に囲まれた、ひんやりとした空気の部屋だった。
ところどころ傷だらけの椅子が並び、棚の上には魔法書とホコリまみれのティーカップ。


そしてその中央に、黒い影のように腰かけていたのは――スネイプ先生だった。



ギラリと光る目。



その視線が一列に並んだ生徒たちをゆっくりと舐めるように見渡す。
チユは一瞬だけ息を止めた。

彼の視線は、まるで心の奥の秘密まで暴こうとしてくるようで、背中の奥――封じた“羽根”がうずく。




ルーピンが最後に入り、扉を閉めようとすると、スネイプが冷たく切り出す。




「ルーピン、開けておいてくれ。我輩、できれば見たくないのでね」


冷ややかな声。
黒いマントを翻したスネイプは、ドアへと向かいながら、振り返りざまに続けた。



「誰も君に忠告していないと思うが――このクラスにはネビル・ロングボトムがいる。この子には難しい課題を与えないよう、ご忠告申し上げておこう。ミス・グレンジャーが耳元で指図をするなら別だがね」



静まり返る教室。

ネビルの顔は真っ赤に染まり、ハリーが怒りで拳を握る。
チユは喉の奥がきゅっと痛んだ。
スネイプの言葉は、教室の空気を一瞬で冷たくする力を持っていた。



だが、リーマスは――ただ静かに眉を上げて、優しい声で言った。



「術の最初の段階で、ネビルに私のアシスタントを務めてもらおうと思ってます。それに、ネビルはきっと、とてもうまくやってくれる」

彼の声には、ネビルへの信頼とスネイプへの静かな反発が滲む。



その一言に、ネビルが目を見開いた。
スネイプは唇を歪め、何も言わずに部屋を出ていった。
バタン、と扉が閉まる音がやけに大きく響く。



チユは心の中でガッツポーズをした。
リーマスの横顔は星空の下で見た夜のように、穏やかで、それでいて強い。



「さあ、それじゃあ――」



リーマスがみんなを奥へと導く。



部屋の奥には、古びた洋だんすがひとつ。
誰も使っていないようで、木の板はひび割れ、取っ手が少し曲がっている。
だが近づいた瞬間、そのたんすが突然、ガタガタと震えだした。

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