第9章 ハローウィン
「ハリーも喜びそうだろ?」
その一言に、チユの笑顔が一瞬揺らいだ。
ハリーのことが、ふっと胸の奥に蘇る。
「なぁ、チユ。」
ジョージが声を潜め、彼女の耳元で囁く。
「ハリーの分も、ちゃんと選ぼう。後でこっそり渡して、驚かせてやろうぜ」
チユの顔がぱっと明るくなった。「いいね、それ!ハリー、絶対びっくりするよね!」
彼女の笑顔に、ジョージも目を細めて頷いた。
「ああ、大喜びに違いない」
その時、店の奥からフレッドの声が響いた。
「おーい、チユ!こっちの『爆発ボンボン』ゾンコの商品とセットでハリーを吹っ飛ばすぞ!」
フレッドのからかいに、店内に明るい笑い声が広がる。
リーも手を叩いて大げさにうなずき、4人の間に軽い賑わいが生まれた。
チユは小さく笑って、肩をすくめる。
「だめだよフレッド。ハリーには優しいお菓子を選ぶんだから!」
「おっと、姫の仰せのままに」フレッドがニヤリと笑った。
ハリーとリーマスへのお土産を抱え、ハニーデュークスを後にした一行は、次なる目的地、ゾンコの店へと向かった。
石畳を踏みしめるたび、チユの足取りは自然と軽くなる。
ジョージは隣で楽しげな鼻歌を奏でながら歩き、さりげなくチユの持つお土産袋をそっと整える。
その優しい仕草が、彼女の心をくすぐる。
フレッドとリーは前を歩き、いつものようにふざけ合いながら、ホグズミードの賑やかな通りを進んでいく。
冷たい風が頬をかすめても、チユの心は不思議なほど温かい。
まるで、小さな魔法が彼女の周りをそっと包み込んでいるかのようだった。