第6章 薬の香りと、因縁
フレッドがさらにニヤニヤしながら、意味ありげに2人を交互に見る。
「おお、ジョージにもついに春が来たか?誰かと思えば、チユ姫とは!なんとも大胆不敵な!」
「バカ言え!」
ジョージがフレッドの顔にマッシュポテトを塗りつけようとスプーンを振り上げる。「これでもくらえ、兄弟!」
マッシュポテトが勢いよく宙を飛び、フレッドの頬をかすめた。
「うわ、汚ないぞ!」
フレッドは笑いながら身をかわし、反撃とばかりにパンをつまんで投げ返す。
パンは宙で軽く弧を描き、ロンの肩に命中した。
「おい!僕は無関係だろ!」
ロンの叫び声が響き、ハリーが腹を抱えて笑い出す。
ハーマイオニーでさえ、呆れたように眉をひそめながらも、口元を押さえて笑っていた。
「もう、やめてよ!」
チユは笑いをこらえきれず、両手で口を押さえた。
その頬は笑いすぎてほんのり赤く、目尻には光が宿っている。
ジョージがそんなチユを見て、いたずらっぽくウィンクした。
「チユは俺の味方だろ?ほら、フレッドにパン投げてやれ!」
そう言って、パンをチユの手元にそっと置く。
チユは笑いながら、軽く振りかぶるふりをした。
「おお、チユ姫が参戦か!」
フレッドが大げさに目を丸くし、フォークを盾のように構える。
「ジョージ、姫をそそのかすとは、いい度胸だな!」
「そそのかしたんじゃない、正義の味方に加勢を頼んだだけさ」
ジョージが得意げに言い返し、チユに小さく肩をぶつけてくる。
ハリーが笑いながら両手を上げた。
「そろそろ停戦しないと、マクゴナガル先生が飛んできて全員減点だよ!」
「停戦か……じゃあ最後に1発だけ――」
フレッドがパンを持ち上げた瞬間、ハーマイオニーが鋭く睨んだ。
「やめなさい!」
その一言で、フレッドは固まり、全員が笑いに崩れた。
チユはその輪の中で、肩を震わせながら笑った。
「本当に……どうしようもない兄弟だね」
「ああ」
ジョージが笑い、髪をかき上げる。
「でも、退屈しないだろ?」
チユは小さく息をついて、笑顔のままうなずいた。
「うん、退屈なんて――全然」
グリフィンドールのテーブルは、笑い声と温かな空気に包まれている。
まるでそこだけ、小さな魔法の炎が灯っているように。