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ハリー・ポッターと笑わないお姫様【3】

第6章 薬の香りと、因縁




魔法薬学――ネビルにとって、最も過酷な授業。
そしてその講師は、最も冷酷な教師。


スネイプが黒いローブを翻して歩み寄る。
その姿はまるで影そのもので、チユは思わず息を詰めた。



「オレンジ色か、ロングボトム」



スネイプが冷ややかに言いながら、ひしゃくで薬をすくい上げた。
粘つく液体が、大鍋からゆっくりと垂れ落ちる。




本来は明るい黄緑になるはずの薬――それが、不気味なオレンジ色をしていた。



「ネズミの脾臓は1つでいいと、はっきり言ったはずだ。ヒルの汁も少量で十分だと……我輩の声は、君の頭蓋骨を突き抜けていかなかったのかね?」



スネイプの声は、まるで毒のように滑らかだった。
ネビルは青ざめ、小さく震えている。



「先生、お願いです!」
ハーマイオニーが勢いよく立ち上がった。

「私に手伝わせてください!ネビルの薬、ちゃんと直させます!」



しかし、スネイプの視線は冷ややかに彼女を切り捨てた。
「でしゃばるよう頼んだ覚えはない、ミス・グレンジャー」



ハーマイオニーは頬を真っ赤にして座り込む。
その肩が、ほんのわずかに震えていた。




「ロングボトム。この授業の最後に、その薬を君のヒキガエルに数滴与えてみるといい」



スネイプの声は静かだが、冷酷な愉悦が滲んでいる。
「結果を見れば、少しは真面目に取り組む気になるだろう」




ネビルの顔から血の気が引いた。
チユはもう見ていられなかった。
思わず身を乗り出し、声を震わせながら言った。




「先生……!それは、ちょっと――」



スネイプの黒い瞳が、すっとチユに向けられる。
その一瞬で、教室の温度が下がったように感じた。



「減点されたいのかね、クローバー?」
その低い声には、静かな圧がこもっていた。



チユは喉を詰まらせ、唇を噛んだ。
「……いえ、なんでもありません」




小さく俯くと、ハリーが心配そうにこちらを見ていた。
(また減点されるところだった……)




スネイプが離れていくと、教室の空気が少しだけ緩んだ。
しかしチユの胸の中では、怒りと無力感が混ざり合っていた。

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