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ハリー・ポッターと笑わないお姫様【3】

第6章 薬の香りと、因縁



ロンの顔が、みるみる真っ赤に染まる。


「お前の腕、どこも悪くないだろ!」
彼は歯を食いしばり、ナイフを握る手に力がこもる。



だが、マルフォイはニヤリと笑い、挑発的に言葉を返す。
「でも、先生が手伝えって言ったんだ。聞こえなかったのか、ウィーズリー?」



彼女はマルフォイの薄笑いを睨みつけ、口を開きかけたが、言葉を飲み込んだ。
(言っても無駄……スネイプは絶対にマルフォイの味方だ)



ロンは渋々ナイフを手に取り、マルフォイの分の雛菊の根を刻み始めた。
だが、その切り口は大小バラバラで、明らかに雑だった。



「せんせーい!」
マルフォイが、芝居がかった声を再び張り上げた。

「ウィーズリーが僕の根をめちゃくちゃにしました!」



スネイプがゆっくりとテーブルに近づいてくる。
彼の黒いローブが床を滑る音が、チユの耳に不気味に響いた。

長い黒髪の隙間から、鋭い視線がロンの刻んだ根と彼自身を交互に射抜く。




「ひどい切り方だな」

スネイプの声は、冷たく、鼻にかかっていた。
まるでロンの努力を嘲笑うかのようだ。



その瞬間、チユの我慢が限界を超えた。
彼女は思わず立ち上がり、声を絞り出した。



「でも、先生!」
心臓がドキドキと高鳴り、言葉が震える。だが、彼女は続ける。「マルフォイの怪我、ほんとにそんなにひどいんですか? そうは見えません」




教室の空気が、一瞬で凍りついた。

生徒たちの視線がチユに集まり、息をのむ音すら聞こえる。
スネイプの目は、まるで闇の底からチユを貫くようだった。



「黙りなさい、クローバー」

スネイプの声は、まるで鞭のように鋭く、チユの言葉を切り裂いた。
「グリフィンドールから10点減点。もう一度口を開けば、さらに減らすぞ」



チユは唇を結び、拳を握りしめた。悔しさと怒りが、胸の中で熱い嵐となって渦巻く。
彼女は俯き、机の木目を見つめた。



ハリーが小さく首を振るのが見えた。
ロンも、机を叩きたい衝動を必死に抑えている。


だが、マルフォイは――にやにやと笑いながら、吊った右腕をわざとらしく揺らしてみせた。その仕草は、チユの心に火を点けた。




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