第5章 『魔法生物飼育学』
「…会いに来てくれて、本当にありがとうよ」
ハグリッドはしみじみとした声を出しかけ、ふいに動きを止めた。
その大きな目が、初めて気づいたかのようにハリーに注がれる。
「……おまえさん……なんでここにおる!」
ハグリッドの突然の大声に、チユたちは30センチは飛び上がった。
「ハリー! 暗くなってからうろつくなんていかん! それに……チユ! ロン! ハーマイオニー!おまえさんたちもだ!」
ハグリッドは大股で歩み寄ると、がっしりとした手でハリーの腕をつかみ、まるで子犬を連れていくように玄関へずるずると引きずっていった。
チユはその勢いに圧倒されながらも、ハグリッドの声に滲む必死さに心を掴まれた。
怒っているようで、でもその奥には深い心配が隠れているのがわかった。
「俺が学校まで送っていく! 2度とこんな時間に、俺に会いに来たりするんじゃねぇ! 俺には……そんな価値はねぇんだから!」
思わず一歩踏み出し、チユは叫んだ。
「そんなことない! ハグリッドは……わたしたちの先生で、友達で、頼れる人だよ!」
彼女の瞳はハグリッドを見上げ、まるでその大きな心に届くように願うように輝いていた
「だから……どうか、自分を責めないで」
ハグリッドは一瞬、足を止めた。
びしょ濡れのひげの奥で、彼の表情がゆがむ。
月光に照らされたその顔には、驚きと、ほんの少しの救われたような光が浮かんでいた。