第5章 『魔法生物飼育学』
ハグリッドのコガネムシのような真っ黒な目の端に、きらりと涙が光った。
次の瞬間、ハグリッドはハリーとロンをぐいっと両腕に抱え込み、骨も砕けそうなほど力いっぱい締めつけた。
「うぐっ……!」
「ハ、ハグリッド……!」
2人が胸を押さえて苦しげに声をあげるのを見て、チユは思わず笑ってしまった。
ハグリッドの愛情は、いつもこんな風に少し乱暴で、でも温かかった。
「ハグリッド、もう充分飲んだと思うわ」
ハーマイオニーの真剣な声が響き、彼女はテーブルの上のジョッキをさっと手に取った。
中身を確かめるように一瞥し、きびきびと小屋の外へ消えていく。
「……あぁ、あの子の言うとおりだ」
ハグリッドは2人を解放し、よろめきながら立ち上がると、ハーマイオニーの後を追って外へ出ていった。
扉の隙間から、ばしゃん、と水のはねる音が聞こえる。
チユは思わず首をかしげた。
「ハグリッドは……なにしてるの?」
心配そうに尋ねると、戻ってきたハーマイオニーが肩をすくめた。
「水の樽に、頭を突っ込んでたわ」
そう言ってからっぽのジョッキを戻した。
やがて、髪もひげもびしょ濡れになったハグリッドが戻ってきた。
「さっぱりした!」
犬のように頭をぶるぶる振ると、しぶきが飛んで4人はずぶ濡れになった。
「きゃっ! ハグリッド、ちょっと!」
チユは慌てて袖で顔を拭い、濡れた髪を指で払いながら笑った。
冷たい水滴が頬を滑る感触も、ハグリッドの無邪気な笑顔を見ると、なぜか心地よかった
「ハグリッド、犬みたいだよ!」チユはくすくす笑いながら言った。
ハグリッドが「ほっほっ!」と笑い、ロンとハリーもつられて笑い出した。
ハーマイオニーは呆れ顔だったが、口元に小さな笑みが浮かんでいた。