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ハリー・ポッターと笑わないお姫様【3】

第5章 『魔法生物飼育学』




夕食のあと、混み合ったグリフィンドール談話室で宿題を広げたものの、4人とも筆は進まなかった。
ときおり窓の外に目をやっては、夜風に揺れる影を気にしている。




「……ハグリッドの小屋に灯りが見える」
ハリーが小さく声を上げた。


ロンが腕時計を見て、にやっとする。
「急げば、まだ会えるかもしれない。時間もそんなに遅くないし」




幸い、誰にも見つからずに玄関を抜け出すことができた。
夕闇に沈む芝生はしっとりと黒く濡れ、ハグリッドの小屋のランプが遠くで揺れている。



ノックすると、中から「入ってくれ」という低い声。
ドアを押すと、ハグリッドが白木のテーブルに突っ伏すようにして座っていた。

ファングが膝に頭をのせ、心配そうに見上げている。
大きなジョッキを前にしたハグリッドは、明らかに深酒をしていた。




「こいつぁ新記録だ……」
ハグリッドはどんよりした声でつぶやいた。




「1日しかもたねぇ先生なんざ、これまでいなかったろう」



「ハグリッド、まさかクビになったんじゃないでしょうね!」
ハーマイオニーが息をのむ。



「まーだだ」
ハグリッドは大ジョッキをぐいっと傾けた。

「だけんど、時間の問題だわ。マルフォイのことで……」




「アイツ、どんな具合?」ロンが身を乗り出す。



「マダム・ポンフリーが手当てをした。……だけんど、マルフォイはまだうずくって言っとる……包帯ぐるぐる巻きで……」



「ふりしてるだけだ」
ハリーが即座に言い切る。

「マダム・ポンフリーなら何だって治せる。去年なんか、僕の片腕の骨を再生させたんだよ。マルフォイは怪我を利用してるだけさ」



「だけんど……学校の理事たちに知らせがいった。俺が初めから飛ばしすぎたって言うんだ。ヒッポグリフじゃなくて、もっと無害なもんから始めるべきだったってな……」



「ハグリッド、悪いのはあなたじゃないわ。マルフォイの方よ!」
ハーマイオニーの声は震えていた。




「僕たちが証人だ」ハリーも力強く言う。

「ハグリッドはちゃんと注意した。聞いてなかったマルフォイが悪いんだ。ダンブルドアに全部話すよ」



チユも静かに頷きながら、心の奥で決意した。

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