第5章 『魔法生物飼育学』
談話室に戻ると、いつもの賑わいが待っていた。
暖炉の火がぱちぱちと弾け、赤と金のタペストリーが揺れるグリフィンドールの談話室は、まるで別世界のように温かかった。
ソファに腰掛けたハリー、ロン、ハーマイオニーが、声を潜めて何事か話し込んでいる。
「マルフォイ、大丈夫かしら?」
ハーマイオニーの声には心配が滲んでいた。
彼女の眉は、いつものように本を読みすぎた時と同じく、きゅっと寄せられている。
「大丈夫さ。マダム・ポンフリーなら、一瞬で治すよ」
ハリーは気楽に答えたが、彼の緑の瞳には、過去の自分の怪我を思い出しているような影がちらついた。
「でもさ、ハグリッドの最初の授業であんなことになるなんて、まずいよな」
ロンが渋い顔で言った。
赤い髪が暖炉の光に揺れ、そばかすがいつもより目立っている。
「マルフォイのやつ、案の定、引っかき回してくれたよな……」
チユはソファの端に腰を下ろし、みんなの会話を聞きながら、そっと自分の手を胸に当てた。
そこには、ほんの少し前までゼロの温もりが残っていた。
その感触は、まるで星屑のようにキラキラと心の中で輝き、不安の底をそっと支えてくれているようだった。
「マルフォイ、きっと大げさに騒ぐよ」チユは顔を顰めた。
やがて夕食の時間になり、3人と共に大広間へと向かう。
ハグリッドの姿を見たくて、彼らは早足になっていた。
「ハグリッドをクビにしたりしないわよね?」
ハーマイオニーは、テーブルに並ぶステーキ・キドニー・パイにも手をつけず、不安げに言った。
「そんなことしないといいけど」
ロンも皿を前にして手が止まっている。
ハリーはスリザリンのテーブルを鋭く見やった。
クラッブやゴイルに囲まれたマルフォイが、まるで英雄のように話を盛っているのが見えた。
「きっと自分に都合のいい話をでっちあげてるんだ」ハリーは眉をひそめる。
「まあな……初日から、波乱すぎる1日だったよ」
ロンはため息をつき、手を組んだ。