• テキストサイズ

ハリー・ポッターと笑わないお姫様【3】

第5章 『魔法生物飼育学』




談話室に戻ると、いつもの賑わいが待っていた。


暖炉の火がぱちぱちと弾け、赤と金のタペストリーが揺れるグリフィンドールの談話室は、まるで別世界のように温かかった。
ソファに腰掛けたハリー、ロン、ハーマイオニーが、声を潜めて何事か話し込んでいる。



「マルフォイ、大丈夫かしら?」


ハーマイオニーの声には心配が滲んでいた。
彼女の眉は、いつものように本を読みすぎた時と同じく、きゅっと寄せられている。



「大丈夫さ。マダム・ポンフリーなら、一瞬で治すよ」


ハリーは気楽に答えたが、彼の緑の瞳には、過去の自分の怪我を思い出しているような影がちらついた。



「でもさ、ハグリッドの最初の授業であんなことになるなんて、まずいよな」
ロンが渋い顔で言った。
赤い髪が暖炉の光に揺れ、そばかすがいつもより目立っている。


「マルフォイのやつ、案の定、引っかき回してくれたよな……」



チユはソファの端に腰を下ろし、みんなの会話を聞きながら、そっと自分の手を胸に当てた。

そこには、ほんの少し前までゼロの温もりが残っていた。
その感触は、まるで星屑のようにキラキラと心の中で輝き、不安の底をそっと支えてくれているようだった。



「マルフォイ、きっと大げさに騒ぐよ」チユは顔を顰めた。




やがて夕食の時間になり、3人と共に大広間へと向かう。
ハグリッドの姿を見たくて、彼らは早足になっていた。



「ハグリッドをクビにしたりしないわよね?」


ハーマイオニーは、テーブルに並ぶステーキ・キドニー・パイにも手をつけず、不安げに言った。



「そんなことしないといいけど」
ロンも皿を前にして手が止まっている。



ハリーはスリザリンのテーブルを鋭く見やった。
クラッブやゴイルに囲まれたマルフォイが、まるで英雄のように話を盛っているのが見えた。



「きっと自分に都合のいい話をでっちあげてるんだ」ハリーは眉をひそめる。



「まあな……初日から、波乱すぎる1日だったよ」
ロンはため息をつき、手を組んだ。
/ 128ページ  
スマホ、携帯も対応しています
当サイトの夢小説は、お手元のスマートフォンや携帯電話でも読むことが可能です。
アドレスはそのまま

http://dream-novel.jp

スマホ、携帯も対応しています!QRコード

©dream-novel.jp