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ハリー・ポッターと笑わないお姫様【3】

第5章 『魔法生物飼育学』




「――あははっ! ち、違うってば!ルーピン先生は……わたしの義父なの!」



ゼロの目が大きく見開かれ、普段の落ち着いた雰囲気が一瞬で崩れた。
頬がほのかに赤く染まり、動揺を隠しきれていない様子に、チユはお腹を抱えてさらに笑った。



「やだ、ゼロ、顔真っ赤だよ!」




ゼロは気まずそうに咳払いし、照れ隠しに軽く笑った。


「そ、そっか……。いや、ごめん……勝手に変なこと想像して……」




ゼロのこんな一面を見れて、なんだか彼が少し近く感じられた。
無口で、どこか近寄りがたい雰囲気のある彼だが、本当はただ人見知りの優しい男の子なのだ。




ゼロは耳まで赤く染めたまま、ぎこちなく肩をすくめた。
ふっと視線を落とすと、少しだけ声を低くして呟く。




「じゃあ……その、さっきのハグ……もう1回、してもいい?」




チユは目を瞬かせた。
心臓がどくんと跳ね、頬がじんわりと熱くなるのを感じた。


ゼロが自分からそんなことを言うなんて、想像もしていなかった。
いつも遠慮がちな彼が、こんなにも真っ直ぐに気持ちを口にするなんて。




「う、うん……いいよ」



チユの声は、自分でも驚くほど小さく震えていた。
まるで心の奥にしまっていた柔らかな何かが、そっと解き放たれたような感覚だった。



ゼロは一瞬ためらい、ゆっくりと腕を広げた。

そして、まるで壊れ物を扱うように、そっとチユを抱き寄せた。
彼の制服越しに伝わる体温は、草の匂いと混ざり合い、チユの冷え切った心をじんわりと温めていく。

ゼロの心臓の鼓動が、彼女の頬に触れる胸からかすかに伝わってきた。
規則正しいその音が、まるで「大丈夫」と語りかけてくるようだった。




「……君が、怖い思いをしたままじゃ嫌なんだ」



耳元で囁かれたその言葉は、深い優しさが宿っていた。



「……ありがとう」



チユは思わず彼の背中に腕を回し、ぎゅっと抱き返す。
この瞬間を、もっと長く味わっていたかった。



「ねえ、ゼロ」彼女は顔を上げ、いたずらっぽく微笑んだ。
「女の子を口説くの、結構慣れてるんだね」



ゼロの顔が一瞬でさらに赤くなり、目を逸らしてごにょごにょと何か呟いた。その反応に、チユはくすっと笑った。
こんな彼を見るのは、なんだか新鮮で、愛おしかった。

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