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ハリー・ポッターと笑わないお姫様【3】

第5章 『魔法生物飼育学』




彼女の瞳は、憤りと同情で揺れていた。
ずっと好奇の目に晒されてきたチユにとって、ハリーの孤独は痛いほど共感できるものだった。


「なるほど」
マクゴナガル先生は鋭い目でハリーをじっと見つめ、口元を引き締めた。


「覚えておきなさい、ポッター。トレローニー教授は本校に赴任して以来、毎年必ず1人の死を予言してきましたが、未だ的中した試しはありません。死の前兆を告げるのは、新しいクラスを迎えるときのお気に入りの流儀のようです」



先生はそこで言葉を切り、鼻の穴がわずかに膨らむのを、チユを含む全員が見て取った。
だが、すぐに彼女はいつもの淡々とした口調に戻った。




「占いというのは、魔法の中でも最も不確かな分野の1つです。真の予言者はめったに存在しません。そして……」

ほんのわずかに間を置いて、教授はきっぱりと告げた。



「ポッター、私の見るところ、あなたは健康そのものです。ですから宿題を免除する理由にはなりません。ただし――もし本当に死んだら、そのときは提出しなくても結構です」



教室に小さな笑い声がこぼれた。
ハーマイオニーがぷっと吹き出し、チユも思わず肩の力が抜けた。




「先生、ひどいけど……ちょっと安心したかも」
彼女が囁くと、ハリーが苦笑を返した。



それでも、ロンは笑えなかった。
授業後、大広間に向かう廊下を歩きながら、彼の顔はどこか青ざめていた。
シチューの皿が並ぶテーブルに着いても、ロンには食欲がないようだった。



「ロン、元気出して。」
ハーマイオニーがシチューの皿を彼に差し出し、励ますように言った。



「マクゴナガル先生のおっしゃったこと、ちゃんと聞いたでしょう?」




だが、ロンはシチューを皿に取っても、フォークを手に持つだけだった。
「ハリー……」
彼が低い声で切り出した。


「君、どこかで黒い犬を見たことはないよね?」



「うん、あるよ。」
ハリーが静かに答えた。
「ダーズリー家から逃げたあの夜に見たんだ」



カタリ――。
ロンの手からフォークが落ち、皿の上で甲高い音を立てた。



チユはその音にびくりと肩を震わせ、背中の羽根がざわめくような感覚に襲われた。
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