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ハリー・ポッターと笑わないお姫様【3】

第5章 『魔法生物飼育学』



マクゴナガル先生の教室にたどり着くまで、チユたちはホグワーツの迷路のような廊下でずいぶん時間を費やしてしまった。



『占い学』の教室を早々に抜け出したはずなのに、結局、教室の扉をくぐったのは授業開始の寸前だった。

ホグワーツの複雑な構造にまだ慣れない自分を、内心で少し笑った。
この城は 、まるで迷宮だ。




ハリーは1番後ろの席を選んだが、それでもまるでスポットライトの下に立たされているかのようだった。

クラス中の視線がちらちらと彼の方に注がれ、まるで「いつ彼がばったり倒れるのか」と心配しているようにさえ感じられる。



チユはそっと隣に腰を下ろし、ハリーの横顔を盗み見た。
彼の指先は緊張のせいか、机の上でわずかに震えていた。




そのとき、マクゴナガル先生が前に立ち、鋭い声を響かせた。
「……さて、今日は。動物もどき(自由に動物に変身できる魔法使い)について学びます」



先生は軽やかな動きで教壇の前に立つと、次の瞬間、目の周りに眼鏡のような縞模様をもつトラ猫へと姿を変えた。


教室に驚きの声が上がるはずだった。
けれど、今日は違った。



静まり返る教室に、先生の尻尾が一度だけ不満げに揺れた。
すぐに「ポン」という音を立てて人の姿へと戻ると、マクゴナガル先生は鋭い視線でクラスを見渡した。




「……まったく、どうしたんですか、今日は?」
その声に、何人かが小さく身じろぎをした。



「私の変身が拍手を浴びなかったのは、これが初めてですよ」



その一言で、みんなの視線が一斉にハリーへと向かった。
気まずい沈黙が走る。



「せ、先生……」勇気を振り絞るように、ハーマイオニーが手を挙げた。
「わたしたち、『占い学』の授業を受けてきたばかりなんです。……お茶の葉で未来を占って。それで――」




「ああ、そういうことですか。」
マクゴナガル先生の表情が、きゅっと引き締まった。


「ミス・グレンジャー、それ以上は言わなくて結構です。今年は誰の死が予言されたのですか?」




まるで自分が予言の標的になったかのように、心臓が締め付けられた。




しばしの沈黙の後、ハリーが小さな声で答えた。
「……僕です。」

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