第4章 闇を写す茶杯
その言葉の重さに、誰もが口を閉ざした。
誰も、彼をまっすぐに見ようとしなかった。
ハリーの声には、苛立ちと不安、そして深い孤独が滲んでいた。
彼女はハリーの横顔を見つめ、そっと手を握りそうになったが、思いとどまった。
「今日の授業はここまでにいたしましょう」
トレローニー先生の声は、霧の向こうから聞こえてくるようにかすれていた。
「そう……どうぞお片づけを。……みなさまが幸運でありますよう」
生徒たちは押し黙ったまま、茶杯を返し、教科書を鞄にしまい、席を立った。
ロンでさえ、ハリーと目を合わせようとしない。
チユはハリーの隣に立ち、鞄を肩にかけながら囁いた。
「ハリー……大丈夫だよ。未来は自分で作るものだもん」
まるで自分に言い聞かせるようだった。
彼女の声は優しく、しかし力強い。
ハリーがチユを見ると、彼女の異色の瞳は燭光に輝き、まるで希望の光のように見えた。
トレローニー教授の消え入りそうな声が響いた。
「……ああ、あなた」
彼女はネビル・ロングボトムを指差し、にっこりと微笑んだ。
「次の授業には遅れてしまいますね。ですから特によくお勉強なさって、遅れを取り戻してくださいな」
そう告げると、教室の奥へと、まるで幽霊のようにスッと消えていった。
香炉の煙が揺れる薄暗い部屋に、沈黙だけが重く残った。
チユは、目の前の茶杯を片付けながら、長い金髪を耳にかけ、目を軽く細めた。
この授業、毎回こんな調子なのだろうか。
彼女は内心でため息をつき、選択した占い学の授業を、すでに後悔し始めていた。
4人はうんざりした顔を浮かべながら次の、授業である『変身術』の教室に向かった。