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ハリー・ポッターと笑わないお姫様【3】

第4章 闇を写す茶杯



「この1年間で、占いの基礎を学んでいただきます。今学期は紅茶の茶葉占いに専念し、来学期は手相へ。そして夏学期には……水晶玉。もっとも、途中で災いが起これば別ですが」


教授は意味ありげに微笑んだ。


「赤毛の男子に気をつけなさい」



唐突に名指しされたのは、パーバティ・パチルだった。


彼女は慌てて後ろを振り返り、ロンの顔を見てさらに慌てて椅子を引いた。
ロンは「なんだよ」と赤面し、ハリーが小声で吹き出す。



(赤毛の男子……ロンのこと?それともフレッドとジョージ? )
チユは胸の奥に妙なざわめきを感じた。



「それから……2月には不幸にも、このクラスは質の悪い流感で授業を中断されることになり、あたくし自身も声を失います。そして――イースターには、このクラスの誰かと……永遠にお別れすることになりますわ」



その場を包んだのは、重苦しい沈黙だった。


チユは喉の奥がきゅっと締めつけられるように感じ、思わず隣のハーマイオニーの袖をぎゅっと握った。



トレローニーは、生徒たちの不安を愉しむように、ただ微笑んでいた。



「あなた、よろしいかしら」


トレローニー先生の視線がふわりと動き、近くにいたラベンダー・ブラウンを射抜いた。
ラベンダーはびくりと肩をすくめ、盛っていた椅子の中で小動物のように身を縮めた。



「……は、はい」

「1番大きな銀のティーポットを取っていただけないこと?」



拍子抜けするほど穏やかな依頼に、ラベンダーは胸をなでおろした様子で立ち上がり、棚から大きなティーポットを抱えてきた。



「まあ、ありがとう。ところで――あなたの恐れていることですが、それは10月16日の金曜日に起こりますよ」



さらりと告げられた言葉に、ラベンダーの顔がサッと青ざめた。肩が小刻みに震えている。



トレローニーはラベンダーの反応を気にかける様子もなく、手を広げて全員に告げた。


「それでは、皆さま。2人ずつ組になってくださいな。棚から紅茶のカップを取って、あたくしのところへ。あたくしがお茶を注いで差し上げます。それから最後の一滴までお飲みになり、左手でカップを3度まわして受け皿に伏せてください。残された葉が、未来の帳を少しだけ開いてくれましょう」



ざわめきが教室を走り、生徒たちは自然と2人組を作り始めた。

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