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ハリー・ポッターと笑わないお姫様【3】

第3章 吸魂鬼



ハリーたちと寮に戻る途中、玄関ホールでリーマスの姿を見つけた。



「先に行ってて」とハリーたちに告げ、チユが駆け寄ると、彼は顔を上げて柔らかく微笑んだ。
その笑顔は、まるで春の陽だまりのように、チユの心を温かく包み込む。




「リーマス、今日は……本当に、おめでとう!それに、助けてくれてありがとう!」



チユは少し照れながら、両手を後ろで組んでもじもじした。


胸の奥で、リーマスへの感謝と尊敬が熱く渦巻いている。
吸魂鬼の冷たい影を払ってくれたあの瞬間が、チユの心に深く刻まれていた。




「ありがとう、チユ。でも、学校ではちゃんと“先生”と呼ぶこと」
リーマスは優しく諭すように言った。



「うっ……」

彼女は肩を落とし、わざと大げさにしょんぼりした顔を作った。
唇を尖らせ、ちらりとリーマスを見上げる。



リーマスはくすっと笑い、目を細めた。



「ふふ、わかった。2人きりのときは、特別だ。どうだい?」



どこか弱ったような、それでいて優しい響きに、チユの顔がパッと明るくなった。



「ほんと?やった!約束だよ!」



彼女は思わず手を叩き、笑顔が弾ける。
だが、すぐにその笑顔に小さな影が差した。



一息ついて、チユはまた真面目な顔になる。



「ねえ、リーマス…満月の日は、大丈夫なの?」



チユの声は、さっきまでの明るさとは裏腹に、慎重で心配そうだった。
彼女はそっと視線を下げ、床の模様を見つめた。



リーマスは一瞬、静かに彼女を見つめた。
やがて、穏やかな笑みを浮かべた。



「心配ないよりスネイプ教授が脱狼薬を作ってくれるんだ。満月の夜も、ちゃんとコントロールできる」



「スネイプに…?」チユは思わず口をついて出た。
目の前に浮かぶのは、薄く笑むスネイプの顔だ。


「あの人に頼むの?毒を盛られたりしたらどうしよう……!」



チユの言葉は、思わず出た本心の不安だった。スネイプは厳しくて、何か裏があるのではと疑ってしまう。
リーマスはその言葉にくすりと笑い、しかしすぐに真剣な色を戻した。



「そんなこと言ってはいけないよ、チユ」
彼は軽く叱るように言ったが、その瞳にあるのは信頼と穏やかな励ましだった。
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