第3章 吸魂鬼
「そこで、後任として――」
ダンブルドアの目がキラリと光り、まるで秘密を明かす子供のようだった。
「ほかならぬルビウス・ハグリッドが、森番の職務に加え、教鞭をとってくださることになった!」
一瞬の静寂の後、グリフィンドールのテーブルから爆発的な歓声が上がった。チユは思わず立ち上がりそうな勢いで手を叩いた。
彼女の瞳には、ハグリッドの大きな笑顔や、列車ホームでの温かな声がよみがえっていた。
ハグリッドは教師席で真っ赤な顔をさらに赤くし、両手を膝の上でぎゅっと握りしめて俯いている。
その照れくさそうな姿が、チユの心を温かくした。
ロンがテーブルをバンと叩き、叫んだ。
「そうだったのか! かみつく教科書なんて、ハグリッド以外に選ばないよな!」
彼の声は興奮に震え、隣のハリーとハーマイオニーも声を合わせて手を叩き続けていた。
チユも負けじと拍手を送った。
――この喜びを誰よりも伝えたくて。
やがてダンブルドアが再び口を開き、にこやかに両手を広げた。
「さて、これで大切な話は終わりじゃ。さあ、宴を楽しむがよい!」
その言葉と同時に、目の前の皿いっぱいにご馳走が現れた。
香ばしい匂いが立ちのぼり、大広間に歓声が満ちる。
けれどチユの心は料理よりも、穏やかに微笑むリーマスと、嬉しさに震えるハグリッドの姿に釘付けだった。
――宴が終わりに近づいたころ、ついにハリー達がは駆け出した。
チユも後を追う。
「ハグリッド先生!おめでとう!」
ハーマイオニーが叫ぶ。
「みんな……おまえさんたちのおかげだ」
ハグリッドは大きなナプキンで顔を覆いながら、涙声で言った。
「信じられん……偉いお方だ、ダンブルドアは。ケトルバーン先生がもうたくさんだと言いなさってから、真っ先に俺の小屋に来てくだすったんだ。こいつぁ、俺がずっとやりたくてたまんなかったことなんだよ……」
その大きな肩が震えるのを見て、チユの胸も熱く締めつけられる。
「よかったね、ハグリッド……!」
思わず声が漏れた。
涙を拭いながら笑うと、ハーマイオニーも同じように目を潤ませていた。
マクゴナガル先生が「もう行きなさい」と合図すると、チユたちは名残惜しく頷き、席を立った。