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ハリー・ポッターと笑わないお姫様【3】

第3章 吸魂鬼


その言葉に、大広間の空気が一層重くなった。


パーシーが胸を張って監督生らしく振る舞っているのが目に入ったが、チユは思わず目をそらした。
――あの真面目さを、今は少しだけ羨ましく思った。




ダンブルドアは一拍置き、口元に笑みを浮かべた。
「さて、楽しい話に移ろうかの。今学期から、新任の先生を2人お迎えすることになった」


その声に、ようやく大広間の空気が少し和らぐ。



「まず、ルーピン先生。ありがたいことに、空席になっておった『闇の魔術に対する防衛術』の担当を引き受けてくださった」



その瞬間、チユの両手は自然と強く叩かれていた。

胸が熱くてたまらなかった。



涙が出そうなほど嬉しいのに、周囲の拍手はどこか薄い。
彼と同じコンパートメントに居合わせた生徒だけが、大きく拍手をする。



まるで彼の古びたローブや疲れた風貌に、まるで生徒たちが心から歓迎できていないかのよう。
チユの心に、悔しさと怒りが沸き上がった。


チユはさら力強く手を叩いた。
リーマスがどれほど優しく、頼りになるかを、誰よりも知っているから。


列車で一緒だった生徒たち――ハリー、ロン、ハーマイオニーも、チユと同じように大きな拍手を送っていた。
彼らの手には、ルーピンへの信頼が込められている。



きっと彼は素晴らしい教師になるだろう。




チユはふと横に目をやった。

教師席で、セブルス・スネイプがルーピンを鋭く睨みつけているのが見えた。その視線は、単なる怒りを超えて、嫉妬の色に濁っていた。



ロンがチユの耳元で囁いた。

「スネイプ、また防衛術の座を狙ってたんだろ。見てみろよ、あの顔……毒でも飲んだみたいだ」



チユは小さく頷いたが、心はスネイプの視線に引っかかっていた。



(……スネイプにリーマスを悪く言わせたりしない。絶対に)



彼女はそっと拳を握り、リーマスを見つめた。
彼は教師席に静かに座り、スネイプの視線を落ち着いた表情で受け止めていた。



「もう1人の新任の先生は――」
リーマスへの拍手がやむのを待って、ダンブルドアが声を続けた。



「ケトルバーン先生は『魔法生物飼育学』の先生じゃったが、残念ながら前年度末をもって退職なさることになった。手足が1本でも残っておるうちに余生を楽しみたい、とのことじゃ」
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