第3章 吸魂鬼
アルバス・ダンブルドアがゆったりと立ち上がっていた。
長い銀髪と顎ひげが、燭台の金色の光を受けてきらめく。
半月形の眼鏡の奥で、深い青の瞳が穏やかに輝いていた。
ダンブルドアの存在は、まるで大広間全体を包み込む魔法のようだった。
彼は両手を広げ、温かな笑みを浮かべた。
「おめでとう、新入生諸君! そして、ホグワーツの新学期へようこそ!」
その声は、柔らかくも力強く、ホール全体に響き渡った。
ひげが光を反射して揺れる様は、まるで星屑が舞っているかのようだった。
チユの胸に、温かな波が広がる。
ダンブルドアの言葉には、いつも不思議な力があった。
どんな不安も、希望に変えてしまう力だ。
「さて、諸君にいくつかお知らせがある。」
ダンブルドアは一瞬、場を見渡し、まるで1人ひとりの心に語りかけるように続けた。
「その中には、非常に重要なことも含まれる。ごちそうで心が浮かれる前に、まずそれを伝えようかの」
静寂が大広間を包んだ。チユは息をのんだ。
ダンブルドアの声には、穏やかさの中にどこか重い予感が潜んでいるように感じられた。
彼女は隣のハリーをちらりと見た。
彼の顔には、さっきの吸魂鬼の影がまだ残っているようだった。
ハーマイオニーは眉を寄せ、ロンはいかにも落ち着かない様子で膝を揺らしている。
「ホグワーツ特急での捜査があったのは、みなも知っておるな。――わが校は、ただいまアズカバンの吸魂鬼、つまりディメンターたちを受け入れておる。魔法省の要請によるものじゃ」
その言葉に、チユは背筋を固くした。
横でロンが小声で「うそだろ……」とつぶやく。
ダンブルドアの眼差しは厳しく、ホールをゆっくりと見渡す。
「吸魂鬼たちは学校の入口という入口を固めておる。あの者たちがここにいる限り――はっきり言うておくが、誰も許可なしで学校を離れてはならんぞ。吸魂鬼はごまかしや変装にひっかかるような代物ではない。透明マントでさえ、欺くことはできんのじゃ」
ダンブルドアがさらりとつけ加えた言葉に、チユはハリーたちと目を見交わした。
「言い訳やお願いを聞き入れることは、吸魂鬼には生まれつきできん相談じゃ。それゆえ、重ねて言う。誰1人として、あの者たちに危害を加える口実を与えてはならん」