第2章 新学期への期待
「ああ、誇らしいよ……マムの自慢話で耳タコさ。俺たちが監督生になれなかったって、ぐちぐち言うんだよ。『お前たちも少しは真面目にやれ』って」 フレッドが眉を吊り上げ、ジョージが続ける。
「でもね、チユ、想像してごらんよ。僕たちが監督生なんかになったら――ホグワーツ中が大パニックだぜ!」
ジョージはわざとしかめっ面を作り、まるで毒を飲まされたかのように顔を歪め、両手を頭に当てて震えるふりをした。
「ルール遵守!夜更かし禁止!悪戯ゼロ!人生、真っ暗だよ!」
「そんなのまっぴらごめんさ! 俺たちは自由の翼を広げて飛ぶタイプさ!」
フレッドがジョージの肩を叩き、2人は声を揃えて大笑いした。
芝居がかった口調と完璧なタイミングに、チユはとうとう声を上げて笑ってしまった。
「あなたたち、監督生になったらきっと、ルール自体を悪戯に変えちゃうよね」
「その通り! だから、僕たち兄貴のバッジをちょっと改善してやったんだ。見てのお楽しみさ」
フレッドがローブのポケットから、誇らしげに輝くはずの監督生バッジを取り出した。
そこには『首席』とはっきり刻まれている……はずだった。
でも、魔法のインクで巧妙に書き換えられた文字は、こう読めた。
――『石頭』
「どうだい? 兄貴にぴったりだろ? パーシーのあの硬い頭、完璧に表現してるぜ!」
「石頭首席、誕生!マクゴナガル女史に見せたら、どんな顔するかな?きっと、爆発するよ」
チユは手を口に当て、こらえきれずに吹き出した。
涙目になりながら、2人の顔を交互に見つめた。
「チユが笑ってくれて嬉しいよ。夏の間、ロンからチユの話聞いてさ、早く会いたかったんだぜ」ジョージが目を細める。
チユは笑いを抑え、頰を赤らめながら言った。
「ありがとう、私も会いたかったよ。2人が居たら、ホグワーツがまた、楽しくなりそう!」
2人は満足げにうなずき、トランクを一緒に持ち上げて列車へ向かった。
汽笛の音が響く中、双子の笑いがホームに明るい余韻を残した。