第2章 新学期への期待
そんな中、チユの耳に聞き慣れた快活な声が飛び込んできた。
「おい、チユじゃないか!」
「夏休みはどうだった?俺たち抜きで寂しくなかったか?」
振り向いた瞬間、双子の赤毛が同時に揺れ、いたずらっぽい笑みが浮かぶ。
フレッドとジョージだ。
いつも通り、完璧にシンクロした仕草で手を振ってくる。
「フレッド! ジョージ!」
チユは思わず駆け出し、笑顔を弾けさせて2人のもとに飛び込んだ。
夏の間、エジプトでのエピソードをロンから聞いていたが、直接会うとそのエネルギーが胸をくすぐる。
「会いたかったよ! ロンから、あなたたちの悪戯話、たくさん聞いたけど……本物はもっとすごいよね?」
「おお、俺たちを見てこんなに喜ぶのはチユぐらいだな。ジニーなんか、俺たちを見たら逃げ出しそうさ!」
フレッドが大げさに胸を張り、ジョージがすかさず続ける。
「いやいや、鏡を見たら自分でも喜ぶはずさ」
2人は交互に言い合い、互いの肩を叩きながらウィンクを飛ばす。
チユはそんな彼らのノリに、思わずくすっと笑った。
フレッドとジョージの存在は、空気を明るく染め上げる魔法のようだ。
シリウス・ブラックの脱走の影が少し頭をよぎる中でも、彼らの笑いがチユの心を軽くしてくれた。
「聞いたかい? パーシーのやつ、首席になったんだぜ。マムが大喜びで、うちの家がお祭り状態さ」
フレッドが肩をすくめ、わざとらしくため息をつくと、ジョージがすかさず口を挟む。
「わが家で2人目の首席さ。そして――」
「最後のね。もうこれ以上、うちから首席は出てこないよ。運が尽きた!」
フレッドが声をひそめてニヤリと笑い、ジョージも胸を張って誇らしげに――いや、皮肉たっぷりにうなずいた。
「おめでとう、パーシー!って、誰も言ってないけどな。」
チユは目を丸くし、素直に手を叩いた。
「すごいね、パーシー!」
双子は揃って大げさにため息をつき、顔を見合わせて首を振った。