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ハリー・ポッターと笑わないお姫様【3】

第2章 新学期への期待



翌朝のキングズ・クロス駅は、夏の終わりを告げる薄い霞が空を覆い、構内はマグルたちの慌ただしい足音と魔法界の生徒たちの興奮したざわめきで満ちていた。


大きなトランクが転がり、フクロウのかごから小さな鳴き声が漏れ、子どもたちの笑い声が飛び交う。
魔法とマグルの世界が奇妙に交錯するこの場所で、チユの胸は自然と弾んだ。
新しい学期の始まり――そして、リーマスとの新しい日常が待っている。


『9と¾番線』に滑り込むと、赤い蒸気機関車のホグワーツ特急が威風堂々と佇み、ホームは生徒たちで溢れ返っていた。



すぐに見慣れた3人の姿が目に入る。



ハリーの黒髪が風に揺れ、ハーマイオニーのブッシュのような髪が朝陽に輝き、ロンの赤毛が明るく目立つ。



「ハリー! ハーマイオニー! ロン!」
チユは小走りで駆け寄り、思わず顔をほころばせた。


「チユ! やっと来たか!」 ロンが大きな声で返し、いつものように肩を叩いてくる。
ハリーは眼鏡の奥の緑の瞳を輝かせ、ハーマイオニーは本を抱えたまま手を振ってくれた。


「待ってたわよ、チユ。夏休み、元気だった?」 ハーマイオニーの声は優しく、チユの心を温かく溶かした。



少し遅れて歩いてきたリーマスに、チユは「紹介しなきゃ」と思い立つ。


胸の奥で小さな誇らしさが膨らむのを感じながら、彼女はハリーとハーマイオニーに目を向け、声を少し張った。


「えっと……みんな、紹介するね。この人はリーマス。今度、『闇の魔術に対する防衛術』を教える先生なんだよ。すごいでしょ?」



「先生!?」


ハリーとハーマイオニーが同時に声を上げ、驚いたように顔を見合わせた。
ハーマイオニーの眉がピクリと上がり、ハリーの表情には好奇心と少しの警戒が混じっていた。

リーマスは穏やかに微笑み、灰色のローブの裾を軽く払って会釈した。



「初めまして、私はリーマス・ルーピン。ロンとはすでに面識があるけど、君たち2人に会うのは初めてだね」
彼の声は静かで落ち着いていて、まるで古い本のページをめくるような優しさがあった。
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