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ハリー・ポッターと笑わないお姫様【3】

第2章 新学期への期待



リーマスはゆっくりと視線を上げ、チユの目を見つめた。
淡々とした口調の奥に、深い緊張が潜んでいるのを、チユは敏感に感じ取った。



「とても危険だよ、チユ。アズカバンの囚人が脱走するなんて、滅多にないことだ。ディメンターの監視をくぐり抜けるなんて……」
彼の言葉は途中で止まり、暖炉の火が2人の顔を赤く染めた。


「でも、魔法省が動いている。君たち生徒の安全は、守られるはずだ。」



チユはカップをぎゅっと握りしめ、熱い湯気が指先に染みた。


「でも……私、明日からまたホグワーツに行けるの。ハリーやロン、ハーマイオニーもいるし……リーマスも一緒にいてくれるよね? だから、大丈夫だよね? 絶対に。」



彼女の声は少し震え、不安を押し隠した笑顔が浮かんだ。

瞳には、友人たちとの冒険への期待と、リーマスへの信頼がきらめいていた。
でも、シリウス・ブラックの名が、心に小さな棘のように刺さっていた。



リーマスはほんの少し目を細め、優しい笑みを浮かべた。
それは、狼のような彼の内なる影を隠す、いつもの仮面のようでもあった。


「そうだね、チユ。君は1人じゃない。私が必ず守るよ。約束だ」



彼の声は穏やかで、まるで魔法のようにチユのざわめきを溶かしていった。
リーマスの手が一瞬、テーブルを滑り、チユの手に触れそうになったが、すぐに引いた。


その仕草に、チユは彼の孤独を垣間見た気がした。



暖炉の火が柔らかく揺れ、2人の影を壁に長く伸ばした。
外の風が窓を叩く音が、遠い脅威のように聞こえたが、部屋の中は温かな安堵に満ちていた。


チユは新しい杖をローブのポケットにそっと触れ、明日への期待を胸いっぱいに抱いた。
今年の夏の終わりは、ただの寂しさで終わらない。


ホグワーツの城が待つ、新しい章の始まりだ。


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