• テキストサイズ

ハリー・ポッターと笑わないお姫様【3】

第9章 ハローウィン



「じゃあ、行こう」
歩き出そうとした瞬間、ジョージが「あ、待った」と手を伸ばした。



「そんな薄着じゃ風邪を引くかも」


そう言うと、彼は自分の被っていた毛帽をチユの頭にかぶせ、赤いマフラーをそっと首に巻きつけた。
その指先が頬をかすめ、チユの心臓が小さく跳ねる。



「あ、暑いよ…!まだそんなに寒い時期じゃないのに……!」
チユがもぞもぞと抗議すると、ジョージは頑として離さない。



「だめだ。風邪引いたら、俺が困る」
少し照れたような、でも優しい声。チユの頬が熱くなる。


フレッドとリーが顔を見合わせ、やれやれと肩をすくめた。

「まったく、兄弟の恋は重装備だな」



「せっかく可愛い服着たのになぁ……」
チユが少し頬をふくらませると、ジョージの目がぱちりと見開かれた。



「……なんだよ、可愛い事言うじゃないか」
にやりと笑う彼の声に、チユはマフラーに顔を埋めた。



「おいおい、勢い余って全部ひん剥くなよ、相棒!」



フレッドが茶々を入れ、リーが「間違いない!」と頷く。
3人の笑い声がホグズミードの冷たい空気に響き合い、チユの心はふんわりと温まった。


ジョージと一緒なら、きっと今日はいい日になる。
そう思った瞬間、空がいつもより少し明るく見えた。



丘を下りながら、ジョージがふと小さく息を吐いた。
「……ごめん、チユ」



「え?」
チユが顔を上げると、ジョージは苦笑しながら赤毛を風に揺らしていた。


「ハリーのことだよ。結局、今回は準備が間に合わなくて、どうにもできなかったんだ」


チユの胸がきゅっと締めつけられた。
うつむき、冷たい地面を見つめる。



「ううん、ジョージのせいじゃない。わたしだって何もできなかった……」



ジョージは少しの間黙り、そっとチユの肩に手を置いた。
その掌の温かさが、冷えた空気に溶け込むように広がる。



「次は絶対に連れていく。フレッドと俺で、完璧な作戦を立てる。確証あるぜ」
その声は静かだったが、確かな決意を宿していた。



チユは顔を上げ、ジョージの瞳を見つめた。
そこにはいたずらっぽい光と、仲間への真剣な思いが共存している。



「うん……約束だよ、ジョージ。」

/ 128ページ  
スマホ、携帯も対応しています
当サイトの夢小説は、お手元のスマートフォンや携帯電話でも読むことが可能です。
アドレスはそのまま

http://dream-novel.jp

スマホ、携帯も対応しています!QRコード

©dream-novel.jp