第9章 ハローウィン
ホグズミードの石畳が見えた瞬間、チユの目がぱっと輝いた。
雪をかぶった屋根、煙突からの白い湯気、道の両脇に並ぶカラフルな看板——
どこを見ても、夢の中のようだった。
「わぁ……本当に、ホグズミードっておとぎ話みたい……!」
チユは胸の前で手を組んでくるくると辺りを見渡した。
その横でジョージがくすっと笑う。
「おいおい、そんなに見回してたら、ゾンコの店に着く前に目が回っちまうぞ」
「だって…あんなにお菓子が並んでる!あっ、あれがハニーデュークス?」
「そうさ。ホグワーツの生徒みんなが命を懸けて甘いものを求める、伝説の店」
フレッドが胸を張る。
チユは小走りでショーウィンドウに駆け寄った。
中には、虹色の羽根付きチョコや、煙を吐くキャラメル、噛むと笑い出すガムまで、見たこともないお菓子がずらりと並んでいる。
「すごい……!」
頬を紅潮させて言うチユに、ジョージがにやりと笑った。
「喜ぶと思った。——ほら、最初の1個、俺のおごりだ」
そう言って、彼は店の中にチユを導く。
扉の上のベルがチリンと鳴り、甘い香りと笑い声が一気に押し寄せてきた。
「ようこそ、ハニーデュークスへさぁ、迷子にならないようにね」
ジョージがわざとらしく言うと、フレッドが即座に返した。
「無理だな。チユ姫を見失うなんて、俺の相棒にはできない」
「やーい、惚気けやがった!」
リーが背後からひやかすと、
チユの頬がさらに赤く染まった。
――けれど、そんなからかいさえ、今日は全部楽しかった。
目の前には、魔法界の不思議前にはチユの心は、まるでシュガーキャンディのように甘く弾けていた。
店内を進むと、棚にはキラキラ光るキャンディーや、ふわふわ浮かぶマシュマロが並び、チユの目は休む暇なく輝いた。
「やっぱり蛙チョコレートは欠かせないよね……!でもヌガーとココナツキャンディも……それに百味ビーンズにチョコレートと……!あとはシュガーフィズと……こっちのキャンディもいいなぁ……どれにしよう」
彼女の声に、ジョージが笑いながら肩をすくめる。
「全部買ってもいいけど、さすがに財布が泣くぜ。ほら、これなんかどうだ?」
彼が手に取ったのは、星形のキャンディー。
噛むと口の中で小さな花火が弾けるという、見た目も派手な一品だ。