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ハリー・ポッターと笑わないお姫様【3】

第9章 ハローウィン


ホグズミードの石畳が見えた瞬間、チユの目がぱっと輝いた。
雪をかぶった屋根、煙突からの白い湯気、道の両脇に並ぶカラフルな看板——
どこを見ても、夢の中のようだった。


「わぁ……本当に、ホグズミードっておとぎ話みたい……!」



チユは胸の前で手を組んでくるくると辺りを見渡した。
その横でジョージがくすっと笑う。



「おいおい、そんなに見回してたら、ゾンコの店に着く前に目が回っちまうぞ」


「だって…あんなにお菓子が並んでる!あっ、あれがハニーデュークス?」


「そうさ。ホグワーツの生徒みんなが命を懸けて甘いものを求める、伝説の店」
フレッドが胸を張る。


チユは小走りでショーウィンドウに駆け寄った。
中には、虹色の羽根付きチョコや、煙を吐くキャラメル、噛むと笑い出すガムまで、見たこともないお菓子がずらりと並んでいる。



「すごい……!」


頬を紅潮させて言うチユに、ジョージがにやりと笑った。
「喜ぶと思った。——ほら、最初の1個、俺のおごりだ」



そう言って、彼は店の中にチユを導く。
扉の上のベルがチリンと鳴り、甘い香りと笑い声が一気に押し寄せてきた。



「ようこそ、ハニーデュークスへさぁ、迷子にならないようにね」
ジョージがわざとらしく言うと、フレッドが即座に返した。

「無理だな。チユ姫を見失うなんて、俺の相棒にはできない」


「やーい、惚気けやがった!」


リーが背後からひやかすと、
チユの頬がさらに赤く染まった。



――けれど、そんなからかいさえ、今日は全部楽しかった。
目の前には、魔法界の不思議前にはチユの心は、まるでシュガーキャンディのように甘く弾けていた。



店内を進むと、棚にはキラキラ光るキャンディーや、ふわふわ浮かぶマシュマロが並び、チユの目は休む暇なく輝いた。



「やっぱり蛙チョコレートは欠かせないよね……!でもヌガーとココナツキャンディも……それに百味ビーンズにチョコレートと……!あとはシュガーフィズと……こっちのキャンディもいいなぁ……どれにしよう」



彼女の声に、ジョージが笑いながら肩をすくめる。
「全部買ってもいいけど、さすがに財布が泣くぜ。ほら、これなんかどうだ?」



彼が手に取ったのは、星形のキャンディー。
噛むと口の中で小さな花火が弾けるという、見た目も派手な一品だ。
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