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ハリー・ポッターと笑わないお姫様【3】

第8章 ホグズミードの知らせ




ハリーたちが廊下に出ると、ロンが怒りを抑えきれずに吐き捨てた。
「なんだよ、ちょっとぐらいいいじゃないか!」



「ロン……」
ハーマイオニーが眉を寄せて言う。
「仕方ないのよ。規則は規則なんだから」



その「これでよかったのよ」という顔が、ロンの怒りをさらに燃え上がらせた。


チユは2人の間にそっと割って入り、小さく笑った。
「ねえ、ハロウィーンの日にはごちそうがあるでしょ、きっと楽しいよ」



ロンはまだ不満げに口を尖らせていたが、「……ごちそう、な」とぼそりと呟いた。


「そう。きっと甘いカボチャパイが山ほど出るよ」
チユが笑うと、
ハリーが少しだけ顔を上げ、かすかに笑った。


その笑みを見て、チユは思った。



(きっとジョージがなんとかしてくれる……。それにリーマスに頼めばもしかしたら…………)



誰がどんな言葉をかけても、1人取り残されたハリーの心は晴れなかった。


羽根ペンの扱いがうまいディーン・トーマスが、「バーノンおじさんのサイン、僕が上手く真似して書いてやろうか?」とこっそり提案してくれたが、ハリーは首を横に振った。


「もう先生に言っちゃったんだ。……サイン、もらえなかったって」


ロンは「透明マントを使えば?」と、少し無理のある提案をしたが、ハーマイオニーがすぐに反対した。


「だめよ!ダンブルドア先生が言ってたじゃない。吸魂鬼は、透明マント越しでも見抜けるって」



ロンが「くそっ」とつぶやく横で、
パーシーがまるで慰めるような、しかし最悪の口調で言った。



「ホグズミードなんて、たいした場所じゃないさ、ハリー」
と、真面目な顔で続ける。




「菓子屋はまあまあいい。でも『ゾンコのいたずら専門店』は危険すぎる。
『叫びの屋敷』なんて、1度行けば十分だ。ハリー、安心しろ。評判ほどの場所じゃない」



その瞬間、ハリーは顔を背け、談話室の暖炉の火をじっと見つめた。

揺らめく炎の向こうに見えるのは、みんなが笑って歩くホグズミードの通り――それを想像するたび、胸の奥に冷たい痛みが広がる。



チユはそんなハリーを見つめながら、何も言えずにいた。
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