第8章 ホグズミードの知らせ
「えっ、えっと……先生、僕、なくしちゃったみたいです!」
ネビルが慌てて手を挙げた。
「ロングボトム、あなたのおばあさまが私に直送なさいました。そのほうが安全だと思われたのでしょう。さあ、以上です。帰ってよろしい」
生徒たちがざわめきながら教室を出ていく中、ロンが小声でハリーの肩を押した。
「いまだ、行け」
「でも……」
ハーマイオニーが心配そうに口を開いたが、ロンが遮った。
「ハリー、行けって!」
チユはハリーの背中を見つめながら、小さく頷いた。
「大丈夫、ハリー。先生、きっとわかってくれるよ」
そう囁くと、ハリーは少しだけ勇気を取り戻したように見えた。
みんなが教室を出て静かになった頃、ハリーは深呼吸をしてマクゴナガル先生の机に近づいた。
「なんですか、ポッター?」
ハリーの声は少し震えていた。
「先生、おじとおばが……その、許可証にサインするのを忘れちゃって……」
マクゴナガル先生は、眼鏡の上から静かにハリーを見た。
「それで――だめでしょうか?つまり、行ってもかまわないでしょうか?」
先生は書類を整理しながら、短く答えた。
「だめです、ポッター。許可証がなければ、ホグズミードには行けません。それが規則です」
ハリーの表情がみるみる曇る。
ロンが口をはさむ。
「でも先生!ハリーの親戚はマグルなんですよ。ホグズミードのことなんて知らないんです!」
「それでも、私はそうは言いません」
マクゴナガル先生は冷静に引き出しを閉め、
まっすぐハリーを見つめた。
「許可証には“両親、または保護者”の署名が必要です。残念ですが、ポッター――これが最終決定です」
その言葉に、教室の空気がぴたりと止まった。
ハリーたちが廊下に出ると、ロンが怒りを抑えきれずに吐き捨てた。
「なんだよ、ちょっとぐらいいいじゃないか!」
「ロン……」
ハーマイオニーが眉を寄せて言う。
「仕方ないのよ。規則は規則なんだから」
その「これでよかったのよ」という顔が、ロンの怒りをさらに燃え上がらせた。
チユは2人の間にそっと割って入り、小さく笑った。
「ねえ、ハロウィーンの日にはごちそうがあるでしょ、きっと楽しいよ」