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ハリー・ポッターと笑わないお姫様【3】

第8章 ホグズミードの知らせ


チユにとって、リーマスの授業のあとに受けるほかの授業は、どこか色あせて見えた。


ハリーは『占い学』の塔教室にうんざりした様子で通っていた。
高い天井とお香の煙が立ちこめるその部屋は、息が詰まるほどむっとしている。

トレローニー先生が巨大な眼鏡の奥で涙をためて、ことあるごとにハリーの未来を嘆くのを見て、チユもつい眉をひそめてしまう。



「ねえハーマイオニー、わたし、あの先生の授業受けると眠くなっちゃう……」


「わかるわ。お香の煙のせいよ。理論的根拠がまったくないもの」
ハーマイオニーが小声で答え、ロンは隣でニヤリと笑う。


「チユ、俺は眠くなる前に笑っちまう。ハリーの死を“予知”するたびにな」



パーバティとラベンダーは、まるで女王に仕える侍女のようにトレローニーを崇拝していた。
昼食のあと、ふたりが談話室で「先生のオーラが今日は金色だったの」と得意げに話すたび、ロンとチユが吹き出す――そんな日常が続いた。



一方で、『魔法生物飼育学』の授業はすっかり様変わりしていた。
あのハグリッドが、かつての勢いを失ってしまったのだ。


大騒ぎだったヒッポグリフ事件以来、彼はどこか元気がない。
代わりに登場したのは――レタス食い虫。
どこをどう見ても地味な、ぬらぬら光るだけの芋虫のような生き物。



「ねえこれ、なにが“飼育”なの?」
チユが困ったように言うと、ロンはレタスを押し込みながら肩をすくめた。

「こんな虫をわざわざ飼いたい物好きがいるとは思えないね」



ハリーは心配そうに「ハグリッド、ほんとに元気ないね……」と呟いた。
チユはハグリッドの大きな背中を見つめ、胸の奥に小さな痛みを感じた。



そんな退屈な授業が続いたある日。
10月の冷たい風が吹きはじめたころ、空気が一気に明るく変わる出来事が訪れた。


「1回目のホグズミード週末だ!」
ロンが古びた掲示板に貼られた羊皮紙を指差し、目を輝かせた。


「10月末……ハロウィーンだって!」


その声に、談話室のあちこちから歓声が上がった。
チユも、ハーマイオニーの肩越しにその紙を覗き込みながら、胸の奥がじんわり温かくなった。
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