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ハリー・ポッターと笑わないお姫様【3】

第7章 まね妖怪との対決



その言葉に、チユの胸が突かれた。


(“同じ境遇”……人狼として、という意味……)



彼女はゼロの瞳を見た。


彼の静かな声には、深い孤独が滲んでいた。だ
が、同時に、そこには仲間を見つけたような、ほのかな温かさもあった。



ゼロは小さく息を吐き、窓の外を見つめた。



「それがルーピン先生のような優しくて頼りになる人なら……なおさら、ね」




チユはそっと頷いた。「……うん。」
彼女の声は小さく、しかし心からのものだった。



リーマスの優しさ、彼が背負う“影”を、ゼロもまた理解している。
その事実に、チユの心は温かさと切なさで満たされた。




光が廊下に淡く広がり、2人の影が重なる。
まるで、彼らの心にそっと寄り添うように。



チユはふと、勇気を振り絞るように口を開いた。




「ねえ、ゼロ」彼女の声は柔らかく、しかし確かな響きを持っていた。

「もし、夜の月が怖くなったら……私が灯りをつけるよ。一晩中、そばにいて、手を握ってあげる。」



ゼロの瞳が、驚いたようにチユに向いた。
彼は一瞬言葉を失い、長い前髪の隙間から覗く目が、夕陽に照らされてきらりと光った。
やがて、彼の唇に小さな笑みが浮かんだ。




「……チユ。」彼の声は低く、どこか甘く、胸に響くようだった。
「そんなこと言われたら、月夜が待ち遠しくなるかもしれない」




チユの頬が、ほのかに熱くなった。
彼女は照れ隠しに視線を逸らし、石壁を見つめた。



「こ、怖くてたまらない時だけだから……!」
彼女の声は少し慌てたが、そこには純粋な想いが込められていた。




ゼロは小さく笑い、そっと頷いた。
「……うん。約束、覚えておくよ」彼の視線が、チユに戻る。


その瞳には、初めて見るような温かさが宿っていた。
「ありがとう、チユ。」



2人の影が静かに揺れた。
遠くで響く笑い声が、まるで彼らの小さな秘密を守るように響き合った。


チユは胸の奥で、そっと決意を固めた。ゼロの“影”も、リーマスの“影”も、そして彼女自身の“影”も――いつか、月光の下で、すべてを受け入れられる日が来ることを信じて。


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