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ハリー・ポッターと笑わないお姫様【3】

第7章 まね妖怪との対決


静かな廊下に、チユとリーマスだけが残った。
夕陽が石壁に長い影を落とし、どこか遠くで鳥の鳴き声が響く。
リーマスはチユをじっと見つめ、ゆっくりと口を開いた。



「――君のボガート、見たよ。」




チユの心臓が、きゅっと締めつけられた。
彼女は小さく息を呑み、視線を床に落とした。
リーマスの言葉は、まるで彼女の心の奥に隠された扉をそっと叩くようだった。


リーマスの瞳は、責めるような色を一切帯びていなかった。
代わりに、そこには深い理解と、すべてを受け入れるような温かさがあった。




「隠すことは、悪いことじゃないよ」と、彼は静かに続けた。

「でも、君の羽根は呪いなんかじゃない。君が君である証だ。」




その声は、まるで春の陽だまりのように温かかった。
チユの胸の奥で、何かが解けるような感覚が広がった。
彼女は唇を震わせ、目を潤ませながら、かろうじて言葉を紡いだ。




「……ありがとう、リーマス」



声は小さく、かすれていたが、そこには心からの感謝が込められていた。


リーマスは穏やかに微笑んだ。
その笑顔には、彼自身の“影”を抱えながらも、誰かを支えようとする強さが宿っていた。



「君は強いよ、チユ。自分の恐怖と向き合うのは、簡単なことじゃない。でも、君には私がそばいる。そして、仲間がいる。それを忘れないで」




チユは小さく頷き、胸の奥で温かいものが広がるのを感じた。
リーマスの言葉は、彼女の心にそっと根を下ろした。
まるで、ずっと凍てついていた何かが、ゆっくりと溶けていくようだった。




「うん……忘れないよ…」



チユは小さく微笑み、初めてまっすぐにリーマスの目を見た。
彼女の瞳には、ほのかな決意が宿っていた。




リーマスは満足そうに頷き、軽く肩を叩いた。

「よし、じゃあ、仲間たちを追いかけなさい。早くしないと夕食が全部ロンの胃袋行きかもしれない」
彼の声には、いつもの軽やかなユーモアが戻っていた。



チユはくすっと笑い、頷いた。



「うん、きっとそうだね。ありがとう、リーマス!」


彼女は軽い足取りで廊下を駆け出し、仲間たちの笑い声が響く方向へと向かった。
夕陽が彼女の背中に長い影を落とし、その影は、まるで羽根のように軽やかに揺れていた。


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