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ハリー・ポッターと笑わないお姫様【3】

第7章 まね妖怪との対決



ロンはしかし、まったく気づいていない顔で続けた。




「やっぱり、あれって箒で落ちたことが原因なんだろ? 」



「……え?」



ロンが勢いよくうなずく。
「そうだよ、あの事故! チユ、1年生の時、空中から落ちてジョージが助けてただろう?あれ、本気でトラウマになってたんだなあ!いやぁ、あのボガート見たとき、ゾッとしたよ!」




「……あ、うん……そう……なの。空が怖くて……」




チユはなんとか笑顔を貼りつけたが、声は震えていた。胸の奥で、安堵と痛み、そして名前のつけられない寂しさが渦を巻いていた。

ロンは気づいていない。
彼女の“本当の恐怖”が、箒から落ちた事なんかじゃないことを。




ハーマイオニーが心配そうに振り返る。
「大丈夫?」


チユは首を振って、微笑んだ。
「うん、大丈夫。……ありがとう」



ロンは、まったく気づかないまま話を続けていた。
「いやー、でもさ、あの羽根、ちょっときれいだったぞ。ふわって光って。まるで本物みたいだった!」




チユは一瞬、目を見開いた。
ロンの言葉は、無邪気で、まっすぐで――
まるで、自分自身そのものを肯定してくれたように響いた。

そういえば、この異色の瞳を「かっこいい」と初めて褒めてくれたのも、ロンだった。
あのときの彼の笑顔は、チユの心に小さな光を灯した。




彼の背中を見つめながら、チユは小さく息をつく。




(……ありがとう、ロン)



言葉には出さなかったが、チユは胸の奥で静かに呟く。
彼女の異色の瞳が、夕陽に照らされてかすかに輝いた。




「チユ」


穏やかで、どこか温もりのある声が響いた。
チユはハッと顔を上げる。
リーマスが、彼女のすぐそばに立っていた。



「先生……」


「少し、話せるかい?」



チユが小さく頷くと、ロンとハーマイオニーが顔を見合わせ、気を利かせて先に歩き出した。

「じゃあ、チユ、また後でな!」ロンが明るく手を振る。
ハーマイオニーは少し心配そうにチユを振り返ったが、彼女の微笑みに安心したように、ロンと一緒に教室を後にした。


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