• テキストサイズ

ハリー・ポッターと笑わないお姫様【3】

第7章 まね妖怪との対決




黒い狼の影がもがき、やがてふっと縮んでいった。
そこに残ったのは――
子犬のように小さな黒い狼が、しっぽを追いかけてぐるぐると回っている姿。



笑いが起きた。
けれど、チユの胸は熱くなっていた。



ゼロがゆっくりと振り返り、チユと目が合った。
その瞬間、彼女の心臓がまたきゅっと締めつけられた。


彼の“恐怖”が、彼女自身の胸の奥に眠る影を呼び起こしていた。
自分を“怪物”だと思う者の、静かな覚悟。
チユはそれを、痛いほど理解できた。




「よくやった!」リーマスの声が、教室に響き渡った。


「みんな、素晴らしい!ボガートと対峙したグリフィンドール生には、1人につき5点を授与しよう。ネビルは10点だ、最初に果敢に挑んでくれたからね、ハーマイオニーとハリーも5点ずつだ。」





「でも、僕、何もしてない」ハリーが少し照れくさそうに言った。




リーマスはにっこり笑った。
「ハリー、君とハーマイオニーは、授業の最初に私の質問に正しく答えてくれた。それも立派な貢献だよ。」



チユはそっと微笑んだ。
リーマスのそんなさりげない優しさが、彼女は大好きだった。





「よし、みんな、いい授業だったね」
リーマスが手を叩いた。

「宿題だ。ボガートについて本を読んで、まとめを提出してくれ。月曜までだ。今日はこれで終わり!」




生徒たちは一斉に歓声を上げ、わいわいと話しながら教室を出ていく。




「ほんとにいい先生だよな!」
ロンが鞄を抱えながら上機嫌に言った。

「スネイプがあんな格好になるなんて、最高だったじゃないか!」




「ええ、あれは見事だったわ」
ハーマイオニーがくすくす笑いながら頷く。
「ネビルも、やればできるのよね」




「なあ、チユ」
後ろからロンの声が飛んできた。



「え?」


「君のボガート、あれ……なんだったんだ?」




――心臓が、跳ねた。





一瞬、空気が止まったように感じた。
ロンの顔を見る勇気が出なくて、チユはぎこちなく笑おうとした。




「え、えっと……あれ、ね……」


「羽根、だったよな?」




その言葉に、チユの呼吸が止まる。
背中の奥が、ひやりと冷たくなった。
まるで秘密の扉を突然開けられたような感覚。


/ 128ページ  
スマホ、携帯も対応しています
当サイトの夢小説は、お手元のスマートフォンや携帯電話でも読むことが可能です。
アドレスはそのまま

http://dream-novel.jp

スマホ、携帯も対応しています!QRコード

©dream-novel.jp