第3章 優しさに触れ【沖田総悟】
「ここなら大丈夫かな」
わたしはベンチに腰を下ろし、抱き上げた猫ちゃんの頭を撫でる。
「お腹すいたよね、なにか食べるもの……」
といってもわたしはまだ買い物の前であり、食べ物を持っていない。というか……
「……子猫って何食べさせたらいいんだろう。」
動物を飼った経験もないわたしが知るはずもなく、確かチョコレートとか玉ねぎがだめなんだっけ、と頭を悩ませていた。
すると、後ろから声が聞こえた。
「そこで何やってるんでィ」
男性の声が私に向けられていると気づき、後ろを振り向くと、
栗色の髪の男性……いや、真選組の隊士がそこに立っていた。
「……あっ、」
やばい、真選組だ。
武装警察真選組。江戸の町をまもる人達だけど、少々手荒な真似もするという噂。
「若い女がこんな所で何やってるんだと聞いているんでさァ」
質問に答えず怪しまれているのか、彼は私に近づいてくる。
すると、わたしが抱えている猫に気付いたようだった。
「……猫だ」
「は、はい……その、この子がカラスに狙われてて。とっさに保護、したところです」
恐怖で声が震えながらもそう答えた私。真選組の人は私をちろっと見つめながら。
「そう恐がらないでくだせェ。とって食べるわけじゃない。」
そういうと彼はその場にしゃがみこみ猫に視線を合わせる。
その時初めて彼の顔をまともに見ることができた。