第2章 貴方はそのままで【土方十四郎】
「っ、…!?」
廊下の角で運悪く土方さんとぶつかってしまう。
「っおい、危ねぇだろうが、気を………」
「し、失礼します!」
泣き顔、見られたかな……
普段より瞳孔が開いた彼の表情を一瞬見て、わたしはまた駆け出していった。
「ま、まて、お前……」
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「はぁ」
先程から野菜を千切りしながらため息しか出ていない。
ただそばにいたい、だけだなんて自分の気持ちにうそをついていた。
あわよくばどこかお出かけしたい。
付き合いたい。
……そしていつかは。
なんて考えてたみたい。
だから、沖田くんのお姉さんの話を聞いて、動揺したし、絶望した。
……どうしよう。これから真選組に行きづらくなっちゃったな。
「はぁ……」
「さっきからため息ばかりつきやがって」
「っ!?」
私の知っている声が店できこえた。
その声の主はまちがいなく。
「土方…さん…」
「お前、これ落としていったぞ」
黒い着流しを着る彼はお守りをもっていた。
「あ…」
わたしが両親から貰い大切にしていたお守りだった。