第2章 貴方はそのままで【土方十四郎】
だから、わたしは今、店をひとりでのんびりやりながら、暇を見ては真選組の皆さんに差し入れをしている。
生きる意味をくれた皆さんにすこしでも恩返しを、と。
「さあ、ちゃんあがって」
と、近藤さんに背中を押されおじゃまさせてもらう。
廊下を歩いていると、ある人影をみつけた。
「あっ、土方さん……」
「…よォ。か。」
彼は私の姿を見つけると、ふっと目を細め挨拶してくれる。
鬼の副長、と呼ばれている土方さんだが、
彼には色々と気をつかってもらった。
不器用だけど優しい人だ。
「トシ!ちゃんが差し入れもってきてくれたからお前もどうだ!」
「お前また持ってきたのか?店の経営とか大丈夫なのか?」
私よりも高い背の土方さんは、首をかなり上げないと目線が合わないけど、少しかがんでくれるんだよね。
「食材とかは常連さんがもってきてくれますから。」
「フッ、そうか。」
そう土方さんは微笑むと、私の胸は高鳴る。
「の料理はうめぇからな。後で俺も食わせてもらうわ」
土方さんはそういうと手をあげながら廊下の向こうへと去っていった。
……今日は忙しいのかな。あまりお話できなかった。
そう、わたしは密かに土方さんに思いを寄せている。
きっとこの想いは届かないだろうけど、それでもそばにいれれば……なんてね。